2013年1月19日土曜日

ヴァルハラ・ライジング

ヴァルハラ・ライジング
Valhalla Rising
2009年 デンマーク/イギリス 93分
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン

キリスト教徒が茫漠とした北の土地に現われて異教徒を駆逐し始めたころ、その異教徒の一党の奴隷となって金をかけた殺し合いに放り込まれ、片端から敵を屠って無敵を誇る隻眼の男がいて、この男は自分を捕えた一党を皆殺しにして自由を得ると荒れ地を進んでいって異教徒を殺戮しているキリスト教徒の一行に出会い、誘われるままエルサレムを目指して旅立っていくと船は霧に囲まれて進路を見失い、洋上を漂った末に見知らぬ土地にたどり着いて、そこで蛮族の気配に遭遇し、一行のリーダーは蛮族から土地を奪って新エルサレムを作るべきだと主張するが、隻眼の男は一行から離れて森へ足を踏み入れていく。
話だけに注目すれば、状況が得体の知れない歴史的空間に放り込まれてはいるものの『ドライヴ』とまったく同じだと言えなくもない。そこが微妙に触る部分ではあるものの、作家性は明瞭であり、短いカットで構成された(かなり激しい暴力描写を含んでいるにもかかわらず)おおむねにおいて静的な場面が実に心地よいリズムでつながっていく有様をただひたすらに感嘆しながら眺めていた。大胆なフィルターワークを含む撮影、ロケ効果、音楽、美術、いずれもすばらしい(というか、いまさらあからさまなフィルターワークで自分が感動するとはまったく思っていなかった)。傑作であろう。




Tetsuya Sato