2012年4月21日土曜日

ドライヴ

ドライヴ
Drive
2011年 アメリカ 100分
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン


言わばどこの馬の骨とも知れないけれど自動車に関する技能と孤独さでは誰にもひけを取らないという妙に控えめな青年が昼間は修理工場で働き、映画の撮影現場でもカースタントをして働き、夜は逃走専門のドライバーもする、ということをしていると、アパートの同じフロアで暮らすアイリーンとその息子ベニシオに気がつき、手助けのようなことをしているうちに親密さを増して珍しく笑みなどを浮かべていると刑務所にいたアイリーンの夫スタンダード・ガブリエルが出所して戻り、スタンダードは再出発を誓うものの服役中にこしらえた借金のために質屋への押し込みを強要され、放置しておけばアイリーン母子にも危害が及ぶと案じた主人公はスタンダードに手を差し伸べ、スタンダードとともに押し込みの現場へおもむいたところ、スタンダードは店主に射殺された上に奪った額は見込みをはるかにうわまわる、ということで、やばい状況に巻き込まれたと悟る間もなく隠れ家には武装した男たちが出現し、主人公は状況を収拾するために一件の黒幕に金を渡してけりをつけようと試みるが、黒幕のほうでは一件にけりをつけるために主人公の抹殺をたくらみ、それに対して主人公はいたって実際的に暴力に訴えるので、その様子を見たアイリーンは思わず退き、孤独を感じた主人公は夜の町に出て一件の黒幕と対決する。
ストイックな主人公、逃走専門のドライバーというあたりからウォルター・ヒルの『ザ・ドライバー』を思い出すが、『ザ・ドライバー』が非人間的なほど図式的(滑稽とも言う)であったのに対して、こちらの主人公はあきらかに内面を備え、そしていったい何があったのか、ひたすらに孤独であり、孤独さと心中するためにヒロイズムに殉じていく。
主人公のライアン・ゴズリング、アイリーン役のキャリー・マリガンはいずれもきわめて印象的な演技を残している。これに対して親分衆を演じたロン・パールマン、アルバート・ブルックスは造形がやや単純すぎる。映像における文体は明瞭でスタイルがあり、照明が造形的に使われ、観客の心理を刺激するカメラワークは昔のポランスキーを思い出させた。特に造形性においてひとかど以上の作品であることは疑いないが、内容はナルシズムに関するこちらの許容限度を超えている。終盤における構成の若干の乱れも気になった。それにしてもいまどき、いかに東部のファミリーがからんでいるとはいえ、百万ドルのはした金で十人近くが命を落とすというのはいささか腑に落ちないところではある。


Tetsuya Sato