2017年5月4日木曜日

レッド・リーコン1942 ナチス侵攻阻止作戦

レッド・リーコン1942 ナチス侵攻阻止作戦
A zori zdes tikhie..
2015年 ロシア 118分
監督:レナト・ダヴレトヤロフ

1942年、劇中の会話から察するところカレリア共和国の森林地帯とあるとおぼしき平和で小さな村に対空砲二門が配備されていて、その指揮を執るヴァスコフ曹長のところに送られてくる兵隊たちは村が平和でしかも未亡人までいるということで三日で状況を飲み込んで四日目には弛緩して酒を飲みだし、あげくに喧嘩を始めるということを繰り返すので、ヴァスコフ曹長は酒に酔った兵士を前線に戻し、飲酒の問題がない兵士の補充を求めたところ、送られてきたのが女性ばかりで編成された二個分隊だったのでヴァスコフ曹長はいささかうろたえ、しかも村の若い女たちも微妙に反発し、ところが兵士たちは淡々と宿舎を整え、敵機が飛来すればてきぱきと応戦し、それでもどことなく平時の気分が抜けていない、と冬戦争の経験者であるヴァスコフ曹長が考えているとドイツ山岳猟兵が近隣に降下して後方破壊活動を試みるので、ヴァスコフ曹長は配下の五名を選んで迎撃に出撃、女性兵士たちは42年にはほぼ間違いなく支給されてはいなかったであろうスカート姿で森を進み、スカートとブーツのあいだに見える膝小僧、下着姿に加えて全裸で集団入浴といった大胆不敵な経路をたどって敵の前面に先回りするが、敵勢力は報告よりもはるかに大きく、ヴァスコフ曹長は前線慣れしていない五人の部下を、男だったらここまで気にかけないだろうというほどにこまやかに気にかけながら兵士たちの好感と忠誠を引き出し、結果としては、という言い訳があるにしても周囲に事実上のハレム状態を作り出し、接近するドイツ軍と対峙する。
第二次大戦中のロシアの女性兵士を扱った映画はたくさんあるが、あきらかな意図をもってきれいどころを集めてきて、その一人ひとりにシベリアに強制移住させられたクラークの娘だったり、人民の敵の娘で孤児院出身者だったり、エストニアでの虐殺で家族を皆殺しにされていたり、とあれやこれや背景をつけ、これも42年にはまだ支給されていなかったであろう女性下着、くどいようだがスカートとブーツのあいだに見える膝小僧という古典的な萌えポイントをてんこ盛りにして、なんというのか育成型のゲームのようなものに仕上げているが、ナレーションを多用した演出は手際がいいし、撮影もきれいだし、対空砲の細部描写など珍しい場面もあり、前景のほうの思い切りのよさにあきれているうちになんとなく見終わってしまう。
Tetsuya Sato