2016年12月31日土曜日

ターザン: REBORN

ターザン: REBORN
The Legend of Tarzan
2016年 イギリス/カナダ/アメリカ 110分
監督:デヴィッド・イェーツ

1884年のアフリカ分割に関するベルリン会議でコンゴ盆地の統治権を得たベルギー国王レオポルド二世はここを私領して私財をつぎ込むが財政的に破綻、資金を回収するために送り込まれた公使レオン・ロムはコンゴを訪れてダイヤを求め、ターザンに恨みを抱くムボンガからダイヤの代償としてターザンを求められ、ベルギー国王からコンゴの視察に招聘されたグレイストーク卿は「アフリカは暑い」という理由で断るものの、妻ジェーンとアメリカ代表ウィリアムズ博士の説得でコンゴを訪問、ただしレオン・ロムが公安軍とともに待ち構えるボマ港の手前で船を下りてジェーンの生まれ育ったクバ族の村を訪れ、それを知ったレオン・ロムは手勢を率いて村を襲撃、グレイストーク卿は取り逃がすもののジェーンを確保し、さらに村の男たちもさらうので、妻を奪われたグレイストーク卿は村の男たちとともにジャングルを駆ける。 
グレイストーク卿/ターザンがステラン・スカルスガルドの息子アレキサンダー・スカルスガルド、白い麻のスーツに身を包んで怪しい技を使うレオン・ロムがクリストフ・ヴァルツ、文明世界からの来訪者ウィリアムズ博士がサミュエル・L・ジャクソン。序盤からクリストフ・ヴァルツが植民地の悪い白人全開で、収奪ぶりがあからさまに描かれ、ターザンの反撃はここまでやるかというくらいにアフリカの大地が怒りでうなり、悪い白人は分相応の最期を遂げる(悪いのは全部ベルギーだからどこからも文句は出ない、というところがミソであろう)。素材としてはこれまであったものの継ぎ接ぎだが、それを徹底的に反植民地主義的にやったターザン映画というのはおそらくこれが最初であろう。悪役がはっきりしているだけにノリがよく、とにかくスリリングな仕上がりになっている。アレキサンダー・スカルスガルドのターザンは非常にいい感じ。クリストフ・ヴァルツはクリストフ・ヴァルツで見たこともないほど悪い植民地の白人を嬉しそうに演じている。 
Tetsuya Sato

ジャングル・ブック

ジャングル・ブック
The Jungle Book
2016年 イギリス/アメリカ 106分
監督:ジョン・ファヴロー

ジャングルに一人でいた人間の子供をヒョウのバギーラが見つけてオオカミのグループに預け、子供はモーグリと名づけられて牝オオカミのラクシャによって育てられ、そこへトラのシア・カーンが現われて自分の顔に傷を負わせたのは人間であり、人間は自分の仇なので子供を渡せとオオカミに迫り、オオカミのリーダー、アキーラが拒絶するとシア・カーンは戦争を宣言、モーグリはオオカミの群れから離れることを決意してバギーラに連れられて人間の村を目指して出発するが、途中でシア・カーンに襲われてバギーラとはぐれ、ヘビのカーによって自分の過去に関わる秘密を明かされ、クマのバルーに助けられてうまい具合に使役され、バギーラと再会を果たして村への道を進もうとするが、突如として出現したサルの軍団にさらわれてキング・ルーイの前に運ばれる。 
DVDで鑑賞。バギーラの声がベン・キングズレー、カーの声がスカーレット・ヨハンソン、シア・カーンの声がイドリス・エルバ、バルーの声がビル・マーレイ、キング・ルーイがクリストファー・ウォーケン。ラドヤード・キプリングの『ジャングル・ブック』の映画化だが、プロットのベースは1967年版のアニメーションのほうであろう。それをさらにモダンに味付けして、ジョン・ファヴローがいい映画に仕上げている(監督本人が顔を出す機会がない素材だからなのかもしれないが)。構成に無駄がなく、ダイアログもスピーディーで、呼吸もいい。動物ストーカー映画そこのけにリアルに造形された動物キャラクターにはどれもきちんと表情があり、キング・ルーイはなぜかちゃんとクリストファー・ウォーケンの目をしている。オオカミの子供たちをはじめ、毛皮のもふもふ感がよく出ていて、それがうろうろする様子はあまりにも愛らしくてイライラするほどだし、脇役動物たちが微妙に病的なところもかわいらしい。エンディングロールに登場する飛び出す絵本も含め、非常に造形的で楽しめたので、劇場で見なかったことが惜しまれる。 

Tetsuya Sato

2016年12月18日日曜日

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
Rogue One
2016年 アメリカ 134分
監督:ギャレス・エドワーズ

帝国の手から逃れて家族とともに隠棲していたゲイリン・アーソは帝国の手先クレニックによって連れ去られ、幼い娘ジン・アーソは反乱勢力を率いるソウ・ゲレラが預かるが、15年後、帝国の刑務所で強制労働をするジン・アーソを共和国勢力が救い出して例のごとき基地へ運び、そこでジン・アーソの父親ゲイリン・アーソが帝国の最終兵器の開発に関わり、そのゲイリン・アーソに教唆された帝国の貨物船の操縦士が帝国の手から逃れてソウ・ゲレラの手中にあると明かされ、ジン・アーソは解放を条件にいわゆる反乱軍の中でも分派に属するソウ・ゲレラに接触してゲイリン・アーソの情報を得る任務を押しつけられ、反乱軍大尉キャシアン・アンドー、ドロイドのK2とともにソウ・ゲレラがいる惑星へ飛ぶとソウ・ゲレラに会って数年来の恨みを叫び、父親が操縦士に託したホログラフを見ていると惑星上空に完成から間もないデススターが現われて都市を破壊、脱出したジン・アーソは父親がいる惑星へ飛び、そこでいわゆる反乱軍勢力のたくらみを知って反発するが、デススターの前で委縮する共和国勢力の前で反撃を提案、志願者とともにデススターの設計図が保管されている惑星へ飛ぶ。 
序盤、あっちの惑星、こっちの惑星と説明的に(そして悪い意味でジョージ・ルーカス的に)状況が飛び、前半をかけてローグ・ワンのメンバーを構成していく過程がだるいと言えば少々だるいが、後半、惑星スカリフの戦闘が始まるとその「戦争映画」ぶりが相当なもので、むごたらしさを眺めているとヒロインも含めてどことなく無名性を帯びていることにも納得がいく。ギャレス・エドワーズが『スターウォーズ』を叩き台に自分の映画を作ったことに間違いはないし、そこに織り込まれた明確な暴力性はダースベイダーをありがちな悪役からある種の恐怖へと昇華させている。おそらくすでに『スターウォーズ』ではなくなっているが、ある意味、シリーズ最高作である可能性もなくはない、という気がした。ピーター・カッシングの登場にはちょっとびっくり。あと、いつものことながら帝国側はもう少し防空に気を使ったほうがいいと思う。 
Tetsuya Sato