2016年11月6日日曜日

偉大なるマルグリット

偉大なるマルグリット
Marguerite
2015年 フランス/チェコ/ベルギー 129分
監督:グザヴィエ・ジャノリ

1920年、男爵夫人マルグリット・デュモンは後援をしている慈善団体の催しで歌を披露し、その歌を聞いた評論家リュシアン・ボーモンは新聞に批評を寄せてマルグリット・デュモンの歌声には悪魔も逃げ出すほどの迫力があったと紹介するので、記事を真に受けたマルグリット・デュモンはボーモントを新聞社に訪問、ボーモントの友人で詩人・画家のキリル・フォン・プリ―ストの誘いを受けてナイトクラブの催しに参加、マルグリット・デュモンの歌声にあわせてキリル・フォン・プリ―ストがダダイズム的表現を実践した結果、マルグリット・デュモンを含めて関係者は逮捕されるが、マルグリット・デュモンはこの経験から歌手には観客が必要であると確信するようになり、夫ジョルジュ・デュモンの反対を押し切ってオペラ歌手ペッジーニを教師に雇うとリサイタルの準備に取りかかる。
よく吟味された構成で丹念に作られた作品であり、認識面で孤立したヒロインと、ヒロインの認識面における孤立を解消する勇気が持てないその周辺、認識面で孤立したヒロインが幻想を膨らませていく一方で不安を膨らませていくその周辺、ヒロインの幻想に加担しながら得体の知れない呪術的空間を黙々と広げていく謎の執事、という具合に人物とその関係性がおもしろく配置されている。そしてクライマックスは、それこそ悪魔も逃げ出すほど恐ろしい。 
Tetsuya Sato