2016年4月28日木曜日

トポス(168) 夜明けとともに突撃する。

(168)
「先任士官が全員戦死したので、わたしが第二大隊の指揮をとることになった」とロボット四十三号は言った。「王宮の五百メートル手前に複数の前哨地点を設置し、革命派武装勢力、オーク軍の追撃を警戒して後方にも十分な数の哨戒地点を設置した。前哨地点から王宮のあいだはほぼ開けた空間で、両翼には小さな公園があった。政府軍はこの公園にいくつかの機関銃陣地を置いていたので、王宮前広場にそのまま侵入すれば確実に掃射を受けることになる。政府軍はさらに王宮内部に野砲陣地を構築していて、こちらに向かって砲弾の雨を浴びせていた。わたしは大隊を散開させて各自で掩蔽物を確保するように指示したが、それでもいくらかの損害は避けることができなかった。我々の右翼には第五大隊がいたが、損害が大きくて二個中隊規模をかろうじて維持しているだけだった。左翼の第七大隊とは連絡が取れない上、連隊本部は行方がわからなくなっていた。状況は困難だった。しかし、兵士たちの士気は高かった。わたしは深夜になるのを待って第二大隊と第五大隊の配置を入れ替えた。これは敵に気づかれないように、完全な静寂をたもっておこなわれた。右翼に配置された第二大隊は第七中隊を先頭に右前方に向かって前進した。これも完全な静寂をたもっておこなわれた。夜明けまでに第七中隊は敵機銃陣地の後方に達した。これに第四中隊、第五中隊が続き、配置が完了した状態で三個中隊で構成された梯隊が敵左翼を完全に包囲する態勢となった。夜明けと同時に第五大隊が敵正面で擾乱射撃を開始し、敵がこれに呼応するとわたしは全中隊を敵左翼に向かって突撃させた。側面からの突然の攻撃に敵は混乱状態に陥った。敵兵は陣地を捨てて逃げ出し、我々は逃げる敵兵を追ってそのまま王宮に突入した」

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