2016年4月27日水曜日

トポス(167) 時間との闘いが始まる。

(167)
 歩く死者の大群が町になだれ込んできた。歩く死者は逃げ惑う一般市民に襲いかかり、革命派にも襲いかかり、そしてオークの軍団にも襲いかかった。喰われた者は無惨な死体となって道に転がり、噛まれた者は高熱を発して倒れたあと、譫言を言いながらやがて息絶え、それから歩く死者となって立ち上がった。革命派とオークが拠点を放棄して退却に移ると、そこへロボットの軍団が猛烈な速さで突き進んだ。ブラスターで敵を焼き払い、携帯用光子魚雷で建物を粉砕した。ロボットの先鋒が王宮に迫った。
「時間との戦いだった」と所長は言った。「緒戦で使いすぎたので光子魚雷の予備がなくなっていた。ブラスターのバッテリーも切れかかっていた。兵士たちのバッテリーにはまだ余力があったが、兵器が役立たずになりかけていた。もちろん補給は試みたが、前線が錯綜していた上に将校の損耗率が非常に高くて、各部隊は連携を失っていた。補給部隊の多くは自軍にたどり着くことができないまま、敵の攻撃を受けて全滅した。市内の混乱に乗じて侵攻すれば作戦遂行が容易になるとの判断だったが、ゾンビどもの介入で敵対勢力が浮き足立ち、そのせいでこちらの進撃速度が予想以上に速くなって、前線部隊が統率を欠いたまま、不用意に突出してしまったのだ。指揮命令系統は混乱し、撤退も再編成も不可能だった。運を天にまかせて進撃を続けるしかなかったのだ。時間との戦いだった」と所長は言った。

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