2016年4月14日木曜日

トポス(156) ミュンは答えを発見する。

(156)
「答えは労農大衆にあった」とミュンは言った。「かつて予言者たちを率いていたとき、答えは霊感にあると信じていた。そしてこのときの確信は、実はその後も変わっていない。失敗の原因は、孤立した集団に頼って結果を求めたようとしたことだ。予言者たちは健闘したが、本質的な疎外感と最後まで訣別できなかった。囚人たちも同様だった。自然法の理念を背景に置いて認識を一般化するというアイデアは素晴らしかったが、囚人たちはこの目的を手段に変えてしまった。予言者にしても囚人にしても、理念を通じて新しい人間に脱皮することができなかったのだ。だが、わたしは新しい人間を求めていた。世界を変えるために価値観を転換できる人間を、理念と一体化して、それを存在理由にできる人間を求めていた。そしてその答えは労農大衆にあったのだ。希望は労農大衆にある。原理は階級闘争にある。自然法の理念は我々に草分け的な政治意識をもたらしたが、歴史的な現実は理性的な考察と自然法の理念にあらがい、抑圧のみを目的とする成文法を形成した。成文法の強固な砦を我々は一度は理念によって突き崩したが、残念ながら二度目はなかった。我々が砦を突き崩しただけで満足して、上部構造の破壊を試みようとしなかったからだ。だが、今度は違う。我々は弁証法的闘争を実践し、上部構造を確実に破壊する。しかも計画を遂行するのはいずれも革命の専門家だ。彼らはいずれも生まれながらの指導者であり、理論家であり、労農大衆を誰よりも深く理解している。彼らは進化した人類だ。彼らの最新の研究成果によって、革命的労農大衆の存在がすでに立証されている。革命的労農大衆は確実に存在し、ただ行動開始の合図だけを待っているのだ。合図を送れば集まってくるのだ。こちらからわざわざ探しにいく必要はないし、我慢して夕食に招待する必要もない。革命的労農大衆は待っているのだ。顔のない大衆が待っているのだ。機は熟した。予言は成就しつつある」

Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.