2016年3月24日木曜日

トポス(138) ギュンは大きな黒い鳥に遭遇する。

(138)
 ギュンは月の裏側に立っていた。
「わたしは超人である前にまず科学者だ」とギュンはいつも話していた。「だから常に論理的に思考する。地球上のどこをどう探しても、惑星壊滅爆弾を見つけ出すことはできなかった。妙に評判のいい爆弾の噂を耳にしたが、評判のいい爆弾が惑星壊滅爆弾であるはずがない。大宇宙の偉大な力は爆弾を地球のどこかに潜伏させて、それから爆発させようとたくらんでいる、とわたしは推理した。おそらくは地中深く、地球の中心核までもぐらせて、そこで爆発させようとたくらんでいる、とわたしは推理した。だが、わたしの超人的な能力をもってしても地球の中心核には近づけない。そうだとすれば大宇宙の偉大な力の秘密基地を見つけ出して爆弾を解除するしか地球を救う方法はない。わたしの月へ急いだ。そして難なく」とギュンはいつも話していた。「秘密基地を見つけ出した」
 銀色の宇宙服に身を固めたエルフの弓兵隊が秘密基地を守っていた。基地に近づくギュンに向かって、銀色にきらめく矢が降り注いだ。ギュンはデュワっと叫んで両の手首を交差させた。ほとばしり出た灼熱の光がエルフの弓兵隊を焼き払った。ギュンは基地に乗り込んでいった。減圧で吸い出されていくエルフを横目に司令室の奥へと進んで、列柱のある広間に踏み込んだ。巨大な顔がそこにあった。ギュンは巨大な顔を破壊した。だが、それは抜け殻だった。大宇宙の偉大な力の本体ではなかった。本体はいったいどこにいるのか。大宇宙の偉大な力を探すギュンの耳に美しい笛の調べが聞こえてきた。列柱の陰から横笛を持った美しい若者が姿を現わし、目を怒らせてギュンをにらんだ。
「愚か者め。あと一晩、あと一晩で、呪いを解くことができたのに」
 若者の姿が鳥に変わった。大きな黒い鳥になって、冷たい月の空へ舞い上がった。

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