2016年2月8日月曜日

トポス(96) ネロエは義勇軍への参加を呼びかける。

(96)
 軍が全滅したので新しい軍が必要になった。化け物の軍団が迫っている状況では、通常の手順で兵士を集める猶予はなかった。ネロエはテラスに立って演説をして、義勇軍への参加を呼びかけた。多くの市民が義勇軍に志願した。クロエは強制徴募隊を組織して国の各地に送り出した。クロエの強制徴募隊は屈強の下士官で構成され、黒い棍棒で武装して、いかなる躊躇もなしにあらゆる扉を蹴破って、そこにいた者を容赦なしに徴募にした。夕食の祈りを捧げているところへ飛び込んで一家の主人と長男を捕え、工場に出勤してきた工員たちを包囲して全員を軍隊送りにした。病院に押し入って開腹手術中の医師と看護師を徴兵し、もちろん患者のほうも徴兵して、棍棒で小突いて自分の足で歩かせた。あまりの乱暴狼藉ぶりに多くの市民が怒りを抱き、徴募隊を囲んで抗議した。中には石を投げつける者もいた。徴募隊が脅威を感じると、すぐにキュンが出かけていった。羊飼いの杖の先で地面を叩くと抗議する者はいなくなった。強制徴募隊は義勇軍の募兵事務所にも突撃した。事務員や義勇兵をまとめて捕えて軍隊に送った。繁華街では道を封鎖して、路上にいる者を片っ端から捕えていった。酒場にも踏み込んで、酔っ払いを引っ張っていった。抵抗する者は棍棒で殴った。抵抗した者の中にヒュンがいた。したたかに酔っ払って剣を抜き、徴募隊の隊員たちに斬りかかった。徴募隊はヒュンを殴って昏倒させた。残りの酔っ払いと一緒に馬車に詰め込んで町のはずれの兵営に送った。

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