2016年1月19日火曜日

トポス(79) 所長の前にまばゆく輝く光の玉が現われる。

(79)
 所長は再び崖の縁に足を置いて、何かもっとモダンな相手に呼びかけた。すると所長の前にまばゆく輝く光の玉が現われた。見上げるほどの大きさで、崖の前で宙に浮いて太陽に似た光を放っていた。光の玉から光の腕が伸びてきて、所長をふわりとつまみ上げた。光の腕が所長を運び、光の玉が口を開けた。所長は光の玉の口をくぐり、そこで深い眠りに落とされた。気がつくと冷たい金属製の台の上で、からだを拘束されていた。黄ばんだ光が妙ににじんで、まわりをはっきりと見ることができない。誰かがいる。吊り上がった目で所長を見下ろしている。人間ではなかった。それは何か不気味な形の器具を手にしていた。不気味な器具を所長のからだの人間の部分やロボットの部分にあてていった。全身に隈なくあてていった。組織が取られた。血を抜かれ、油を抜かれた。しばらくすると頭の中で、耳に障る金属的な声が響き始めた。ガンマGTBの数値が高くなっています。肝機能の低下が疑われます。腎臓の石灰化が認められ、尿素窒素も標準よりやや高い数値を示しています。コレステロールの数値も全般に高めで、脂質異常の疑いがあります。生活習慣の改善、特に食事療法の採用を強く推奨します。アルコール、たばこは避けてください。ロボット構造体の潤滑油の酸化が進んでいるようです。劣化した潤滑油は作動不良の原因となるので、早期の交換を強く推奨します。

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