2015年12月16日水曜日

トポス(52) ピュンは不満を感じている。

(52)
 ピュンはギュンの傭兵部隊を預かっていた。ギュンの合図でミュンの予言者を駆逐して、ミュンを殺害する手筈になっていた。ミュンの排除に成功したら、ミュンに代わってギュンがすべてを牛耳ることになっていた。それはそれでかまわないと思ったが、かまわないと思ったときにはギュンに不満を感じていた。ギュンは待っているだけで、実行するのはピュンだった。ギュンは文句を言うだけで、現場で苦労するのはピュンだった。それなのに、なぜギュンが全部を持っていくのか。ピュンの不満に気がついたのはギュンではなかった。ミュンでもなかった。ピュンの不満に気がついたのは政府の潜入捜査官だった。予言者の一員となってミュンの組織の内偵を進めていた捜査官は間もなくピュンの存在に気がついて、訓練された鼻でヒュンの不満を嗅ぎ取った。ピュンを監視して、甘い言葉と報酬で釣ってインフォーマントに仕立て上げた。ギュンの作戦は筒抜けだった。ギュンの傭兵部隊がミュンの護衛に襲いかかると、そこへ政府の特殊部隊がなだれ込んでギュンの部隊に襲いかかった。二流に届かない顔ぶれのギュンの部隊はたちまちのうち駆逐され、ミュンの護衛は降伏した。ミュンはその場で逮捕された。ギュンも間もなく逮捕された。ミュンとギュンの裁判が始まり、すぐに判決が出て二人は刑務所に送られた。ミュンは回想録を書き始めた。予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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