2015年12月11日金曜日

トポス(47) ギュンは究極の魔法玉を完成する。

(47)
 ギュンの手の上で小さな魔法玉が黄金色の光を放っていた。
「世界に二つとない」ギュンが言った。「これが究極の魔法玉だ」
 ギュンが魔法玉を投げ上げた。魔法玉が一直線に空に向かって駆け上がった。すぐにかすんで見えなくなった。しばらくしてから天空の一点に黒い雲が現われた。渦を巻きながら広がって、真昼の空を覆っていった。雲の中心に新たな小さな渦が浮かんだ。回転しながらまわりの雲を押しのけると、虚空につながる窓が開いた。夜の空よりもなお暗い漆黒の世界を巨大な影が横切った。何度となく円を描くと最後に大きな弧を描いて輪になった雲をくぐり抜けた。雷をしたがえて影が飛んだ。黒い翼を広げて風に乗り、尾を伸ばして風を切り、長い首をめぐらして雲の影になじむ地上を見下ろした。黄金色の目が光を放った。口から黄金色の光が放たれた。光は燃える玉となって空を駆けて彼方に見える山の頂に激突した。山がはじけた。爆音とともに炎と土砂が噴き上がった。黒い翼が空を叩いた。黄金色の目が前をにらんだ。山の形が変わっていた。それが大きく羽ばたいた。形を変えた山の上に降り立って、四つの足で焦げた地面を踏みしめた。翼を畳み、また大きく広げると、雲が渦巻く空に向かって雄叫びを放った。
「少しばかり改良すれば」とギュンが言った。「こけ脅しの描写はカットできる」
 予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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