2015年11月23日月曜日

トポス(32) ヒュン、クロエと再会する。

(32)
 職を失った人々を棍棒を持ったロボットたちが追い散らした。橋の下や地下室に逃げ込んだ人々を棍棒を持ったロボットたちが追い散らした。一方、目先の利く人々は進んで時代の流れに飛び込んでいった。金貸しは大金を稼ぎ出した。銀行は貸し剥がしに乗り出し、債権は束で売り飛ばされ、裁判官は執行命令の束に署名した。商店や住宅や農地が次々に差し押さえの対象になり、不法に居座ろうとする無法者を追い出すために棍棒を持ったロボットたちが送り込まれた。斧を取って抵抗しようとする者もいたが、ロボットに囲まれて棍棒で打たれた。血で書かれた陳情書が市長の前に届けられたが、市長はその紙を丸めて靴の汚れを拭い取った。
 くくくくく、と市長が笑った。
 くくくくく、とロボットが笑った。
「許さない」とクロエが叫んだ。
 クロエのショットガンがロボットたちを吹き飛ばした。金貸しは蜂の巣にされ、裁判官は尻に散弾を撃ち込まれた。クロエはショットガンの弾倉に弾を詰めて市庁舎へ走った。市長はヒュンを解放した。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「邪悪な黒い力がいま、ここに迫っている」と市長が言った。「おまえが英雄なら、行っておまえの運命と戦ってみろ」
 ヒュンは羽根飾りがついた帽子をかぶり、名もない剣を腰に吊るした。クロエがショットガンをヒュンに向けた。
「ろくでなし」とクロエが叫んだ。「口先だけの嘘つき野郎」
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「俺は心を入れ替えた。だから一緒にやり直そう。そして運命を分かち合おう」
 クロエの頬を涙が伝った。

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