2015年7月27日月曜日

Plan-B/ 弁護

S7-E02
弁護
 一か月足らずのあいだに行方不明者が三人出て、死体になって相次いで見つかったあと、警察は彼を逮捕した。彼が官選弁護人を拒否したので、彼の両親がわたしを雇って、わたしは彼に会うことになった。彼は警察ではなくて病院にいた。彼はドアが二重になった隔離室にいて、わたしは彼に会う前に防護服をつけなければならなかった。彼は寝台の上にいた。褐色をしたアメーバ状の物体が彼だった。吐き気をもよおす悪臭がした。揺れ動く膜の下から荒んだ顔が現われて、虹彩を失った目がわたしを見上げた。開いた口の中に何かが見えたが、それは人間の舌とはまるで異なる何かだった。彼はそれを動かして、苦労してかすれた声を絞り出した。自分は無実だと主張した。犯行があった時刻には一人で部屋にいたという。しかしそれを証明する手段はないし、仮にそれが事実だとしても、彼を見た瞬間にわたしの考えは決まっていた。弁護料は魅力だったが、怪物の弁護をすることはできない。

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