2015年6月24日水曜日

Plan-B/ 夫

S6-E12
 十年にわたる漂泊のあと、男はようやく自分の家にたどり着いた。門に立って聞き耳を立てるとにぎやかな宴会の音が聞こえてくる。不意に心を躍らせて門を叩くと顔に覚えのある下男が現われたが、男の姿を見るやいなや、物乞いは裏へまわれと吐き捨てた。口をはさむ間もなく門の扉を閉めるので、男はぶつぶつと下男を罵りながら裏へまわった。裏口の戸を叩いてみると、今度は顔に覚えのある下女が現われた。男を見るといかにもわずらわしそうに鼻を鳴らして叩きつけるように戸を閉めた。しばらくしてからまた顔を出して、男の足もとに木切れのような物を投げ捨てたが、それは固くなったパンだった。男はパンを懐に入れて、昔からある穴をくぐって塀を越えた。こっそり屋敷にもぐり込んで、広間の様子を盗み見た。近在の男たちが集まって、男のパンや羊を食べ、男の酒を飲んでいた。そして酔った勢いで男の妻を盗もうとしていた。飲んで食って女を奪う算段をするのに忙しくて男に気がつく者は一人もない。男は壁にかかった斧を取った。広間に乗り込んでいって手近にいた一人を細切れにした。残りの男たちはその有様を見ていっせいに恐怖の叫びを放ったが、逃げ出そうにも酔いで腰が抜けていた。男は残りの者を一人ずつ細切れにしていった。逃げようとした下男も細切れにした。広間にいた全員を細切れにしたあと、台所に入っていって下女たちを細切れにした。最後に寝室に入っていって、そこで機織りをしていた妻を細切れにした。屋敷からひとの気配がなくなると、男は斧を捨てて外へ出た。固くなったパンを取り出して、顔をしかめて歯を立てながらどこへとも知れずに歩き去った。

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