2015年6月16日火曜日

シー・オブ・ザ・デッド

シー・オブ・ザ・デッド
Mar Negro
2013年 ブラジル 106分
監督:ホドリゴ・アラガオン

海辺の寒村で漁師をしているペロア・フェルナンデスは夜の海で網を投げて半漁人のような化け物を引き揚げ、まだ生きていたそれに腕を噛まれて命からがらに逃げ戻り、ペロアの若い妻イシドラは亭主が手ぶらで帰ってきたので亭主の傷を縫って焼いたレモンを傷口にあてて手当をしてから近所のバーまで肉を買いに出て、バーの下働きをしているアウビノがやって来たイシドラの姿を熱い目で見つめ、イシドラは肉を持ち帰って料理をして亭主と二人の子供に昼食を出すとなにやら亭主の様子がおかしい、ということで、近所の女が近所に開店するクラブで調理の仕事があると誘いに来ても一度は断るものの、日給を聞いて考えを変えて夜になるのを待って出かけていくと、亭主のほうはいよいよ様子がおかしくなって痛みを訴え、娘を薬草を探しにやり、薬草を探しに森に入った娘はそこで得体の知れない集団と出会い、恐怖に駆られて家に帰ると父親が幼い弟を食べていて、いよいよ恐怖に駆られて外に飛び出すと得体の知れない集団も互いを食らいあっていて、そういうことが起こっていると知らないイシドラがクラブの厨房で料理をしていると店のほうから銃声が聞こえ、様子を見に出てみると化け物のようになった亭主が蜂の巣にされていて、イシドラに懸想している地元の若い男がイシドラをかばって厨房へ連れ込み、そこで水などを与えて気持ちを落ち着かせようとしていると今度は料理女が黒い胆汁を吐いて暴れ始め、店のほうでは死んだはずのペロア・フェルナンデスが起き上がって黒い胆汁を撒き散らし、クラブの護衛が発砲すると巻き添えを食らって客が死に、胆汁を浴びた男女がゾンビとなって護衛に群がり、店のオーナーは開店初日をめちゃくちゃにされて怒り狂ってクローゼットからミニガンを引っ張り出すとゾンビの群れに弾を浴びせ、店から脱出したイシドラはアウビノが働くバーに逃げ込むものの、そこにもゾンビが群れで押し寄せ、失われたシプリアンの書にからんで殺された男が首から上をアカエイにして現われ、アウビノは死んだイシドラの魂を呼び戻すためにシプリアンの書を開いてイシドラの娘を生贄に捧げようとたくらみ、呪文を唱え始めるとすぐさま戸口に悪魔が現われ、ゾンビも現れてアウビノに襲いかかり、イシドラの娘はその隙をついて逃げ出して海岸でゾンビの群れに襲われるが、そこに現われたクジラのゾンビによってゾンビの群れは叩き潰され、娘はクジラのゾンビに追われてさらに逃げる。
監督は『デス・マングローヴ』『吸血怪獣 チュパカブラ』のホドリゴ・アラガオン。文脈がどうこう、というよりも、この世の果てのような場所で、ただもう地獄が出現するだけ、という方向のようで、冒頭の怪物にしても、アカエイにしても、ゾンビにしても、クジラにしても、なにか一貫した説明がついているわけではない。ただどこかの見えないところで(おそらくは謎の魔道書にからんで)引き金が引かれていて、それであれやこれやの無残なことが起こっている、という以上の説明はない。引き起こされた事件が日常の悪意や善意や貧しい生活をただひたすらに飲み込んでいく、という一連の描写が、決して器用にではないものの、とにかくパワフルにつながれていて、出血量がすさまじく、子供ですらも容赦しない。それにしてもクジラのゾンビというのはゾンビ映画史上、初めてであろう。 


Tetsuya Sato