2015年4月11日土曜日

バベル

バベル
Babel
2006年  フランス・アメリカ・メキシコ 143分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

日本からやって来たハンターがモロッコ人のガイドに感謝の印としてウィンチェスター・ライフルを送り、アメリカ人の夫婦は唐突に末の息子を失ったことで不仲になり、夫は関係を修復するために妻をモロッコに連れ出し、モロッコ人のガイドは贈られたライフルを近所のヤギ飼いに売り、ヤギ飼いはヤギの放牧に出かける二人の息子にライフルを預け、二人の息子がライフルの試射をしているうちにバスを狙った一発がアメリカ人夫婦の妻にあたり、夫は妻を助けるために現地人に当り散らし、妻は妻で慣れない環境に運び込まれて恐怖を覚え、夫が大使館に電話して救援を求めると即座にこれはテロリストの仕業だという話になってどこかで政治問題に発展し、出動したモロッコの警察はやたらとハードボイルドに犯人を探し、ヤギ飼いの親子を山に追い詰め、東京ではモロッコから照会を受けた警視庁がライフルの元の持ち主と接触を図り、元の持ち主は妻を自殺で失っていて、聴覚に障害を負った娘は父親に反発したのか軌道をはずれ、アメリカ人夫婦に雇われているメキシコ人の家政婦は息子の結婚式に出るために夫婦の子供を連れてメキシコへ戻り、結婚式を楽しんだあと、帰り道の入国審査でトラブルに放り込まれる。
小さな心の持ち主が世界のそれぞれの場所で悲しみを抱え、勝手なことを不器用に進めていくので、ときには問題が悪化していく。手持ちカメラを多用した撮影はたくみに無数の顔を捉え、前景に見える顔を突き放したように背景に埋め込んでいく。構成上のバランスがよく、語り口は鮮やかで、淡々としたリズムが心地よい。これだけ空間的に拡散した話を飽きさせもせずに最後まで見せる手腕はたいしたものだ。役所広司、菊地凛子も好演していたように思う。ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットはある意味、典型的なアメリカ人を演じてそれらしいし、アドリアナ・バラーザは悲嘆に暮れるメキシコ人家政婦に存在感を与えている。


Tetsuya Sato