2015年3月12日木曜日

Plan-B/ 雨

S3-E31
 雨のなかを兵士たちが進んでいた。重たい背嚢を背負い、重たい銃を担ぎ、重たくなった服に喘ぎながら、重たい靴にからみつく重たい泥を踏みにじって一歩一歩進んでいた。兵士たちの銃の先ではコンドームが揺れて動いている。雨は銃のなかにも、からだのなかにも染み込んでいた。雨は兵士たちの顔を叩き、肩に重たくのしかかった。わずかな休憩の時間にも、雨は兵士たちを叩き続けた。車が兵士たちの脇を通り過ぎて、褐色の泥を跳ね上げた。兵士たちは泥を浴びて舌打ちをした。虚しいほど白い眼を疲労で黒ずんだ顔に並べて、遠ざかっていく車を見送った。どこかで将校が笛を吹いた。休憩の時間が終わり、兵士たちは重たくなった腰を上げた。そこに敵が現われた。泥を破って不格好な機械が飛び出してきて、回転する刃で兵士たちをなぎ倒した。切り落とされた腕や首が泡立つ泥に転がった。数人が銃を構えて引き金を引いた。発砲できない銃がある。不発に終わった弾が薬室にはまって音を立てた。それでも何発かが敵に向かって飛んでいった。的を外して泥を弾いた。敵はすぐに泥の底に姿を消した。兵士たちは白い眼を並べて泥を見下ろし、泥を足で踏みにじり、それから銃を担いで道の先へと歩き始めた。雨のなかを兵士たちが進んでいく。

Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.