2014年12月13日土曜日

Plan-B/ 戦場

S1-E25
戦場
 アメリカ合衆国陸軍の戦車隊の兵士たちは北アフリカの戦場でドイツ軍の捕虜になった。顔を煤だらけにしたドイツ兵はひどく怒っていて、兵士たちを手荒に扱った。彼らはトラックに追い上げられて、砂漠の奥の山岳地帯にある捕虜収容所へ運ばれた。そこにはすでに百人を超す連合軍捕虜がいて、脱走をたくらんで地下にトンネルを掘っていた。脱走決行の夜、いきなりサイレンが鳴り始めた。鉄条網の陰に伏せて見ていると、ドイツ兵が砂漠に向かって発砲を始めた。機銃の曳光弾が輝く線を夜空に刻んだ。連合軍が攻めてきたのか。あれを見ろ。捕虜の一人がそう叫んで指差した。裸の子供のようなものが群れになってサーチライトの光のなかに躍り出た。銃撃をものともしないで進んでくる。撃たれると弾かれたように舞い上がるが、地面に落ちると立ち上がって、何事もなかったように走り始める。ドイツ軍が乱射していた。ドイツ軍が叫んでいた。銃声が轟き、叫びが響き、それから銃声が消えて叫びも消えた。サーチライトが動かなくなった。あれを見ろ。捕虜の一人がそう叫んで指差した。裸の子供のようなものの群れがドイツ兵を運んでいく。獲物を見つけた蟻のように、一列になって次から次へとドイツ兵を運んでいく。行列は夜の闇に消えていった。しばらくするとミシンを動かすような音が聞こえてきた。あれを見ろ。捕虜の一人がそう叫んで指差した。夜空にくっきりと円盤が浮かんだ。それは猛烈な速さで空の彼方に消えていった。

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