2014年12月12日金曜日

Plan-B/ 菌糸

S1-E24
菌糸
 壁を菌糸が伝っていた。男は壁に手を伸ばして、指の先で菌糸に触れた。軽くつまんで引き剥がすと、糸が伸びてすぐに切れた。白い菌糸のかけらが指先に残った。ところがすぐに見えなくなる。吸い込まれたように消えてなくなった。男は首を傾げて指先をこすった。翌日の朝、男は目覚めてすぐに、強い痒みを感じて目をこすった。指で触れると白いものがくっついてきた。目ヤニではない。男は洗面所に入って鏡に顔を近づけた。涙腺のあたりが白いもので埋まっている。指でつついてこそげ落とした。それから歯を磨こうとして口を開けて、鏡の前から飛びのいた。歯茎が白く染まっている。いや、得体の知れない白いものが網の目状に広がって歯茎を覆い尽くしている。これも指でこすってこそげ落とした。歯ブラシを取って、今度は指の先に痒みを感じた。見ると爪の下から白いものがはみ出している。爪の一つを指で押すと白い液体が前に飛んだ。男は恐怖を感じて鏡を見た。顔のあちらこちらに白い点が浮かんでいた。思わず見入っているうちに白い点から白い線が放射状に伸び始めた。男は声を上げようとして、声が出ないことに気がついた。舌がおかしい。指で触れると舌が崩れた。崩れ落ちる組織と一緒に白い糸がしたたった。それ以上、鏡を見ていることはできなかった。男はそこから逃げようとした。逃げようとして動けないことに気がついた。伸びた菌糸が根を張っていた。男は額を打ちつけて、目の前の鏡を粉々に砕いた。

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