2014年11月27日木曜日

Plan-B/ 風

S1-E12
 山の奥からあふれた風が蒼ざめた空の下で渦を巻いた。梢を揺すり、青葉を散らし、白い道を駆け下りた。駐車場に並ぶ車を包み、休憩所の壁を撫で、開かれた窓からなかへ入って人間たちの息を奪った。ひとが手をとめ、足をとめた。声を出す者はない。息をする者もない。ただ佇んで、あるいは腰かけたまま、焦点を失った目を前に向けている。誰かの手からカップが落ちて、湯気の立つ液体が脚にかかった。誰かの手から財布が落ちて、硬貨が床に転がった。騒ぐ者はいない。あわてて腰を屈める者もいない。厨房から炎が噴き出した。からだが炎にあぶられる。しかし逃げ出す者は一人もない。

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