2014年11月30日日曜日

フューリー

フューリー
Fury
2014年 イギリス/中国/アメリカ 134分
監督・脚本:デヴィッド・エアー

1945年4月、ドイツ領内に移った西部戦線でドン・コリア―軍曹が指揮するシャーマン戦車はドイツ軍の反撃を受けて副操縦手を失って原隊に復帰し、そこで間違って戦車部隊に配属されたタイピストのノーマン二等兵を加えて前線に戻り、歩兵部隊に協力してドイツ軍の対戦車砲陣地を撃破して進路にある町に侵入し、小競り合いのあとで占領に成功して短い休息時間を過ごし、そこへドイツ軍反攻の知らせが届くのでコリア―軍曹はアメリカ軍支援部隊の側面を守るためにシャーマン戦車四両を指揮して前線を越え、そこでタイガー戦車と遭遇して友軍三両を失い、たった一両で指定された突出部に到達したところで今度は中隊規模の武装SSと遭遇する。 
映画史上、シャーマン戦車をもっとも美しく撮った映画だと思う(しかもAP、HE、WPと容赦なしに打ちまくる)。そしてこれも映画史上初めて本物のタイガー戦車が出演させて、これまでに映画に登場したたタイガー戦車との決定的なフォルムの違いを観客の前で明らかにする。本物は意外なまでにシャープなのである。そしてこのタイガー戦車対シャーマンの戦闘シーンはすばらしい仕上がりで、それに先だっておこなわれる歩兵部隊との共同作戦も戦術的に正確で心理的にも納得できる描写がすばらしい。プロット自体は古典的な戦争映画をなぞっているが、抑制された演出と戦場と戦闘行為の半端ではないむごたらしさとその結果として出現する終末観で戦争という世にもおぞましい災厄の普遍化に成功している。戦車、兵士、捕虜、民間人、避難民、いずれを取ってもディテールがすごい。 
Tetsuya Sato