2014年11月13日木曜日

謎の要人悠々逃亡

謎の要人悠々逃亡
Very Important Person
1961年 イギリス 98分
監督:ケン・アナキン

1943年の5月だか8月だか11月。天才的な科学者が英国政府の委託を受けて新たな航空装備の開発をおこなっている。そして秘密裏にそのテストをおこなうことになり、科学者は海軍中尉の名前と身分で空軍のランカスター爆撃機に乗り込んでいく。ところがドイツ上空で対空砲火にあって爆撃機は被弾、科学者は開いた穴から吸い出されてパラシュートで降下し、ドイツ軍の捕虜となる。で、この33歳でサーの称号を受けたビーズ卿、あるいはニセの海軍中尉というのがとにかく威張り返ったおっさんで、それが英国本土にあってはまわりを軽んじ、捕虜収容所(ドイツ空軍の収容所で英国の将校ばかり600人)でもまわりを軽んじ、もちろん捕虜仲間だけではなくて所長のことまで軽んじるので所長が怒って頬を叩くと脛を蹴って反撃を加える。怒るのは所長だけではなくて、まわりの連中も怒り始めてあれはスパイであろうなどと勘ぐっていると、そこへロンドンからの指令がもたらされ、あれはチャーチル首相ご指名のVIPだということが判明し、だから一刻も早く脱出させてイギリスに戻さなければならない、という話になっていく。
いちおうコメディなのである。収容所の細かな描写はそれなりに笑えるものの、主軸よりも周辺人物の漫才めいた状況を作るほうに力が入って、特異な人物設定を消化しようという努力があまりおこなわれていない。だからジェームズ・R・ジャスティス扮する科学者も自分で認めているほど賢そうには見えてこない。もう少し賢い話を期待していた。


Tetsuya Sato