2014年10月29日水曜日

ハッカビーズ

ハッカビーズ
I Heart Huckabees
2004年 アメリカ 107分
監督:デヴィッド・O・ラッセル

自我の確立に問題のある男が不審な偶然に気を取られて哲学探偵に調査を依頼し、夫婦者の哲学探偵は実存主義を振りかざして依頼主の周辺を嗅ぎ回り、そうしているとその哲学探偵のかつての弟子で哲学の暗黒面に落ちた哲学者が登場して男を虚無主義へ引きずり込む。
主人公で環境保護団体の支部長がジェイソン・シュワルツマン、いかがわしい哲学探偵夫婦がダスティン・ホフマンとリリー・トムリン、暗黒面に落ちた哲学者がイザベル・ユペール、その弟子筋で、9.11以降は石油問題しか話題にできなくなった消防士がマーク・ウォールバーグ、ジェイソン・シュワルツマンを罠にかけて環境保護運動を乗っ取ろうとたくらむスーパーマーケットの公報担当がジュード・ロウ、そのガールフレンドで、哲学探偵夫婦の罠にはまっていきなりアーミッシュ化するのがナオミ・ワッツ。このキャスティングはかなりすごい。出演者たちはみな適当にリラックスして学芸会的な演技を披露していて、それをなんとなく眺めているのは楽しいものの、映画自体はかなり浅薄なしろものである。まず絵と音楽の薄さが気に障った。話のほうではいろいろと大風呂敷を広げようとは試みているが、すぐに先へ進めなくなるし、毒気もあまり続かない。そして失速を繰り返したあげくの結論が「ひととひとは関わりあう」ではどうしてみようもないのである。立ち往生している人間の関係性の話だとすれば、ポール・トマス・アンダーソンの『マグノリア』ほうが巧みであろう。『スリー・キングス』でもそうだったが、デヴィッド・O・ラッセルとはとにかく相性が悪い。横ずれは横ずれでかまわないが、その横ずれの仕方に面白みがない。

Tetsuya Sato