2014年9月13日土曜日

グローリー

グローリー
Glory
1989年 アメリカ 122分
監督:エドワード・ズイック

南北戦争中に実在した黒人連隊の話らしい。このあたりの事情は知らないけれど、マサチューセッツ第54連隊ということは義勇軍であろうか。そうなるとマシュー・ブロデリックがいきなり大尉から大佐に昇進している理由もわからないでもない。
かなり素早く、しかも低予算で作られているような気がしてならないが、戦闘シーンなどはそれなりに頑張っている。とはいえ、エドワード・ズィックという監督は歴史的な正確さよりも歴史的なギミックの再構築に関心を持っているようなので、あまり信用しない方がいいと思う。つまりギミックを通じて状況を再現することをもっぱらの目的としていて、社会史的な、あるいは批判的な発想をそこへ入れようという考えをしないようなのである(それが悪いというわけではない。『レジェンド・オブ・フォール』では同じ指向性がよい方へ振れている)。そうでもなければ20世紀末という製作時点で、ただ勇気を示すという理由だけで"白人に率いられた黒人の部隊"が"無謀な突撃をおこない、事実上の全滅を果たす"という状況を無批判かつ肯定的に扱える筈がないのである。もちろんそこで個人やその意識がきちんと説明されていて、監督の視線も個人に注目しているならばやりようはいくらでもあるわけだけど、残念ながらこの映画には図式以上のものは登場しない。白人の大佐も黒人の兵隊も南軍も、どれも表面にゴチック体でそう記されたアイコンのように見える。いや、南軍に至っては、敵という以上の意味付けが与えられていなくて、見ているうちに南軍である必然性すらが怪しくなってくるのである。北軍の将校の堕落ぶりも堕落を先に立てたようなうそ臭さが漂うし、ついでに言えばマシュー・ブロデリックは馬の手綱を握るのに慣れていない。しかもモーガン・フリーマンはモーガン・フリーマンという理由だけで昇進する。ある種の頑張りで作られた映画には違いないけれど(そしてその範囲では好感が持てるけれど)、欠点が目立つ映画でもある。

Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.