2014年9月11日木曜日

征服されざる人々

征服されざる人々
Unconquered
1947年 アメリカ 147分
監督:セシル・B・デミル

1763年。イギリス人アビゲイル・ヘイルは病身の弟を守るために海軍の強制徴募隊に抵抗し、強制徴募隊がアビゲイルの弟を死に至らしめる一方、アビゲイルは強制徴募隊の指揮官を死に至らしめる。裁判がおこなわれ、死刑の判決が下されるが、ジョージ三世のお慈悲によってアビゲイルには絞首台か、さもなくば植民地での奴隷労働かを選ぶことが許される。植民地送りを選んだアビゲイルは競売に付され、ガースと名乗る商売人とガースを嫌うクリストファー・ホールデン大尉とのあいだで競り合いとなり、結局ホールデン大尉が6ペンスの差で競り落とす。ところがホールデン大尉はガースへの悪意から行動していただけで、そもそも奴隷制度を嫌悪していたこともあって、ただちにアビゲイルを解放する。ところがその証文を用意する筈の公証人はガースの側に与してアビゲイルを再び奴隷に落とし、ガースの子分に売り渡す。
さて、そのガースというのは北米植民地の諸悪の根源のような人物で、白人の側にいながらも先住民の族長に取り入ってその娘を娶り、そうしてオハイオの広大な土地を譲り受ける一方、白人植民者の西進を阻んで毛皮取引の利益を独占するために先住民をけしかけて戦争を引き起こそうとたくらんでいた。ホールデン大尉は戦争を回避するために平和の使節となって奥地へ進むが、ガースはすでに手を回していて、ホールデン大尉の一行は先住民族の襲撃を受ける。そこでホールデン大尉はガースを亡き者としない限りは状況は好転しないと判断し、与えられた任務を放棄してガースを追う。そして現在のピッツバーグのあたりにやってくると、そこではガースが経営する酒場で解放された筈のアビゲイルがなんと床を拭いている。
ホールデン大尉はアビゲイルが差し出したガースの悪事の証拠を掴み、アビゲイルを連れて酒場から脱出するが、アビゲイルを連れて出たことにはアビゲイルに対する感情があったからではなくて、アビゲイルを連れ出せばアビゲイルに感情を抱くガースが後を追ってくると考えたからであった。そうと知ったアビゲイルは心に傷を負い、そこへ現われたガースは駐屯部隊の指揮官を味方につけてホールデン大尉からアビゲイルを取り戻し、取り戻されたアビゲイルは先住民の虜となって命の危険にさらされる。だがそこへホールデン大尉が救出に現われる。新たに与えられた任務を放棄してきたのであったが、先住民のまじない師にコンパスを見せてコンパスの針をまじないで動かしてみろと挑戦し、まじない師が針を指差してこれはそもそも一定の方角を指すのではないかと指摘すると、さらにコンパスのトリックで挑戦し、愚かな先住民に恐怖の念を起こさせてアビゲイルの奪回に成功する。
ホールデン大尉はアビゲイルに愛を告白し、砦に戻って戦争の危機を伝えるが、砦の指揮官はホールデン大尉を任務の放棄と脱走を理由に逮捕して軍法会議に送り込み、そこへ悪党ガースが悪意に満ちた証言をするのでホールデン大尉は死刑の判決を受けて執行を待つ運命となる。そしてアビゲイルはホールデン大尉を救うためにガースの前に身を投げ出し、ホールデン大尉はガースが仕組んだ罠から逃れて救援を呼ぶために道を走る。だが本隊には送り込めるほどの軍勢はなく、砦には先住民の勢力が迫る。そこでホールデン大尉は一計を案じ、白人植民者を危機から救うのであった、とこれだけ書いてもまだエピソードの半分も説明していない。出来はともかく、このてんこ盛りは立派であろう。
昔の映画(と言っても第二次大戦後だけど)なので先住民(劇中でははっきり蛮族と言っている)は野蛮な人々として描かれているが、その野蛮な人々がアビゲイルを火刑にする場面のサディスティックな描写には少々身を引いた。1915年の『チート』と変わらないのである。趣味が一貫しているということになるのだろうか。
ホールデン大尉がゲイリー・クーパー、アビゲイルがポーレット・ゴダード、インディアンの族長をボリス・カーロフが演じている。


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