2014年6月12日木曜日

スノーピアサー

スノーピアサー
Snowpiercer
2013年 韓国/アメリカ/フランス/チェコ 125分
監督:ポン・ジュノ

2014年、地球温暖化をなんとかするために空中に冷却物質を散布したところ、ありがちな話であっという間に地表が凍結して生物は死滅、永久エンジンと閉鎖型の生態系を都合よく備えて、どこをどう走るのか一年をかけて地球を一周する列車に乗り込んだ人々だけが生き残るが、それから17年後、列車最後尾の車両では生存者とその子孫が過酷な環境で生きることを強いられていて、反乱分子のリーダー的な位置にあるカーティスは先頭の車両にいる列車の所有者ウィルフォードに憎悪を向けて前方の車両から送り届けられる謎の情報を頼りに暴動を起こし、列車のドアを解放できる技術者を手に入れると前へ前へと進み始める。
 カーティスがクリス・エヴァンズ、その相棒がジェイミー・ベル、指南役がジョン・ハート、ウィルフォードがエド・ハリス、列車の「首相」がティルダ・スウィントン、勝手に行動を開始する技術者がソン・ガンホ。おおむね演劇的な空間を与えられた俳優がそろって魅力的な仕事をしている。ティルダ・スウィントンのほとんど本人には見えないほどの異様な役作りはなかなか衝撃的。 
設定だけを見ると突っ込みどころが満載という感じではあるが、列車という閉鎖空間が視覚的によく生かされているし、美術も非常に面白い。特に美術に関してはチェコのスタジオを使ったせいなのか、不思議な重さがあって見ごたえがある。原作は未見だが、こちらの勝手な想像ではバンドデシネ特有のゆるめで情緒的な構成がボン・ジュノのゆるめで情緒的な演出とうまく一致して味のある映画になったのではあるまいか。比較する意味はないけれど、『グエムル』よりもこちらのほうが数段好きではないかと思う。 


Tetsuya Sato