2014年4月26日土曜日

日陰のふたり

日陰のふたり
Jude
1996年 イギリス 123分
監督:マイケル・ウィンターボトム

けったいな邦題がついているけど、トマス・ハーディ『日陰者ジュード』の映画化。
中身はおおむね原作のとおりだが、やたらと短いカット割りと落ち着きのないカメラ・ワーク、叙情に流れがちな脚本のせいでハーディの小説にある構造的な欠陥、つまり強引な展開ばかりが目につく仕掛けになっている。結果として原作で叙述的な要素が組み上げていた最大の特徴、つまりうんざりするような陰惨さは随分と後退しているような気はするのだが、それがあの小説の身上であったとするならば、出来のいい映画化であるとは言いにくい。ハーディというフィルターにこだわるのは公平ではないかもしれないけれど、結局は映画自体がフィルターからの脱却を観客に強いるほどの成果をあげていない。



Tetsuya Sato