2014年3月1日土曜日

モーツァルトとクジラ

モーツァルトとクジラ
Mozart and the Whale
2005年  アメリカ 94分
監督:ペッター・ネス

アスペルガー症候群を抱えるドナルド・モートンは学位をもっているものの満足な就職ができないままタクシー運転手を続けてくびになることを繰り返し、その一方、同じ問題を抱えたひとびとのサークルを主催している。そのサークルに同じくアスペルガー症候群のイザベル・ソレンソンが現われるとドナルド・モートンは積極的にふるまうイザベル・ソレンソンに引き寄せられ、ふたりは間もなく恋仲になるものの、関係は絶えずダイナミックに変化する。
ジョシュ・ハートネット扮するドナルド・モートンは数字に関する独特の才能を備え、加えてかなり重たいアスペルガー、という設定らしい。ラダ・ミッチェル扮するイザベル・ソレンソンはふつうに美容師ができるくらいなので症状はそれほど重くはないが、それでもかなりの地雷を抱え込んでいる。
アスペルガー症候群に付随する微妙な行動形式、唐突に発生するコミュニケーションの難しさ、といったことがなかなかにうまく取り込まれており、そうした性向をいやみを感じさせずにコミカルな場面に組み上げることにも成功している。演出もまた誠実でいやみがなく、こうした素材を扱う場合の適当な節度を感じさせて好ましいが、ただ、ジョシュ・ハートネットが主演であるという以上に、たぶんに男性視点で作られていたような気がしないでもない。 

Tetsuya Sato