2014年3月8日土曜日

フェイル・セイフ(2000)

未知への飛行
Fail-safe
2000年 アメリカ 86分 TV
監督:スティーブン・フリアーズ

CBSで生放送されたドラマだという。内容は シドニー・ルメットによる1964年版の事実上のリメイクであり、脚本も64年版と同じウォルター・バーンスタイン。
大きな違いは64年版よりも30分短いことで、切られているのは爆撃機の飛行シーンとカッシオ大佐の両親についてのエピソード、ワシントンの夜会とそれに続くドライブの場面である。夜会の場面が削られた結果、好戦的な政治学者の台詞は国防省のシーンにまとめられることになって、結果として政治学者はさらに好戦的な発言をすることになる。これ以外の大きな変更は、爆撃機の編隊長が64年版よりもクローズアップされていること。これは演じているのがジョージ・クルーニーだからであろう。編隊長を説得するために呼ばれる家族は妻から息子に変更されている。これはおそらく時代の反映であろう。ちなみに妻は死んでいるという説明があった。戦略空軍司令部での副官カッシオ大佐の暴走もいくらか変更されていて、これはそのせいで状況が間抜けに見えるようになってしまった。64年版ではロシアとの電話を切ってから内輪でもめている。大統領役がヘンリー・フォンダからリチャード・ドレイファスに代わったことで、ホットラインの場面で受ける印象は全体に柔らかくなったようだ。これもおそらく時代の反映であろう。なにしろ64年版が作られた当時は、現実の話だったからである。
なぜこれを今、というのが正直な感想だが、作り手の基本的な関心はフェイルセイフ・システムではなく核兵器の廃絶にあったようで、そのために冷戦中の核の恐怖を思い出させるという主旨であれば、たぶん成功している。演出は手堅いし、場面数の多い高度な芝居を生放送でやったという勇気は十分評価に値すると思う。 


Tetsuya Sato