2014年2月22日土曜日

バーニー/みんなが愛した殺人者

バーニー/みんなが愛した殺人者
Bernie
2011年 アメリカ 99分
監督:リチャード・リンクレイター

テキサス州東部のカーセージというナマズ料理が出る小さな町にバーニー・ティーディという葬儀学の準学位を持つ三十代の男が現われて葬儀社に就職して葬儀から遺体の処置から営業はもちろん遺族のフォローまで万遍なくこなし、しかも良心的で善意に満ちていて教会の活動や地域の活動にも積極的に参加して町の発展に尽くして、しかも俳優で演出家でよい歌い手でもあり、という具合なので、とにかく皆に愛されて暮らしていると、町一番の金持ちのニュージェント氏が亡くなり、生まれたときからばあさんだという噂があって、横柄で因業で、とにかく町一番の嫌われ者のマージョリー・ニュージェントが未亡人になるとバーニー・ティーディはどの未亡人にもそうするようにマージョリー・ニュージェントにも心を尽くし、そうしていると横柄で因業で町一番の嫌われ者のマージョリー・ニュージェントはバーニー・ティーディの存在に察するところ心を癒され、さながら恋人同士のようにふるまって、気がついてみるとバーニー・ティーディはマージョリー・ニュージェントの恋人兼執事兼使用人兼運転手のような存在になり、横柄で因業で、しかも嫉妬深くて占有欲の強いマージョリー・ニュージェントのふるまいにバーニー・ティーディは必死で耐えようとするものの、どうやらある瞬間に限度を超えてアルマジロを撃つためのライフルを取ってマージョリー・ニュージェントを殺害、そのまま九か月間、マージョリー・ニュージェントの金を使ってカーセージの人びとにさまざまな善意をほどこすが、マージョリー・ニュージェントの不在に疑問を抱いた親族が家に踏み込んで死体を発見、逮捕されたバーニー・ティーディは涙ながらに犯行を自白し、町の人びとはバーニー・ティーディの行為に驚きながらもこれはむしろマージョリー・ニュージェントの自業自得であってバーニー・ティーディにはどうしたって罪はないと考えたので、地元で裁判をおこなって被告がなんとなく無罪になる可能性が高いと考えた州政府はカーセージの地方検事の発案にしたがって裁判所を変更する。 
度を超えた善人ぶりが微妙に化け物じみているバーニー・ティーディがジャック・ブラック、不思議なコケットリーを発揮するニュージェント夫人がシャーリー・マクレーン、見るからに頭の軽い地方検事がマシュー・マコノヒー。
監督がリチャード・リンクレイターなのでどう転んでもはずれはないだろうと思って見始めたら大当たりだで、ジャック・ブラックの使い方がさすがにうまいし、シャーリー・マクレーンののりのりの演技も見ごたえがあるし、マシュー・マコノヒーは出番ごとに場をさらう。実話の映画化ということで、実験的な手法を恐れないこの監督は全体を一本のプロットとして構築することよりも多声性を帯びたセミドキュメンタリーで構成することを選んで多数のインタビューを交える構成を採用しているが、そのあたりの切り替えのリズムも心地よくて丁寧な仕事ぶりに感心する。最後に地元のおじさんが披露するカントリーソング『バーニー、おまえなにをしでかした』はなかなかの傑作なのであった。 


Tetsuya Sato