2014年2月1日土曜日

地獄

地獄
1960年 日本 101分
監督:中川信夫

大学生の清水四郎は矢島教授の娘幸子と婚約して幸福の絶頂にあったが、その晩、友人の田村の車に乗って帰宅する途中、田村が世田谷区上馬で轢き逃げをしたせいで人生が狂うことになり、良心の呵責に悩む四郎が警察への自首を考えても田村が拒絶、目撃者がいないと思っていた事件には実は目撃者がいて、轢き逃げをされた犠牲者の母親が田村の車のナンバープレートをはっきりと見ていて、息子が死ぬと息子の情婦であった洋子とともに轢き逃げ犯への復讐を誓い、四郎は幸子に事情を話して幸子とともに警察へいこうとするが、乗っていたタクシーが事故を起こして幸子は死亡、自暴自棄になった四郎は酒を飲みに出かけてそこで洋子と出会い、四郎の正体を知った洋子は早速四郎を罠にかけようとたくらむが、四郎は「ハハキトク」の電報を受け取って帰省して養老院を営む実家を訪れ、するとそこでは病身の母親の隣で父親が情婦とたわむれ、父親と結託した医師は養老院の入所者にいいかげんな医療をほどこし、居候の画家は父親の依頼で寺に奉納するための地獄絵を描き、父親の情婦が四郎に懸想をすると画家の娘もまた四郎に対して感情を抱き、そうしていると田村も矢島教授夫妻も復讐を誓う女たちも四郎を追って周辺に現われ、あれやこれやとしているうちに主要登場人物も周辺人物もことごとくが死んで地獄に落ちて現世の咎をつぐなうために責め苦にあう。 
四郎が天知茂、閻魔大王が嵐寛寿郎。脚本が微妙に『ファウスト』なのが興味深い。閻魔大王が登場するのは上映時間が1時間ほど経過してから。そのから展開する地獄の地獄ぶりよりもこの世の地獄ぶりのほうがよほどに面白いという難点はあるものの、演出はテンポが早くてパワーがある。対象性の強調と象徴的な表現が大胆に使用されていて、これは下手がやったら目も当てられないしろものになっていたに違いないが、そこも効果的にまとめられている。とにかく野心的で面白い絵を作ろう、という意気込みがたのもしい。
『地獄』予告編



Tetsuya Sato