2013年11月11日月曜日

ダーウィンの悪夢

ダーウィンの悪夢
Darwin's Nightmare
2004年  オーストリア/ベルギー/フランス/カナダ/フィンランド/スウェーデン 112分
監督:フーベルト/ザウパー

ビクトリア湖畔のタンザニアの町を中心としたルポルタージュ。
空港管制官(無線がないので信号灯で飛行機に合図を送っている)、古めかしいイリューシンのパイロット(出稼ぎのウクライナ人)、パイロット相手の売春婦、魚肉加工工場のオーナー、ストリートチルドレン(魚肉の梱包材を焼いて煙を吸っている)、漁師(HIV感染で月に10人以上死亡し、漁に出ればワニに食われる)、地元の牧師、生活のために戦争の到来を望む政府機関の警備員(弓を持っていて、泥棒を発見すると毒矢を放っているらしい)などが登場してそれぞれに語り、輸送機が往路で武器を運んでいる可能性について言及があり、現地タンザニアの貧困と飢餓に触れ、加工後の魚のアラ(蛆が湧いている)の再加工風景(揚げ物にして住民に売る)などが紹介される。
映像はきわめて衝撃的ではあるものの、取材クルーの立ち位置とその周囲の状況は最後までクリアになることはない。たとえば舞台となっているムワンザは別の資料によると人口50万人を越える都市らしいが、画面には寒村のような光景ばかりが現われる。行政機関のようなものは一切登場しない。国立の水産研究所が出てくるものの、映し出されるのはそこのフェンスと夜警だけで、カメラは一歩もなかへ入ろうとしない。取材を断られたから、というのではなく、そもそもコンタクトを取ろうとしていないかのように見えるのである。現地で見たまんま、というよりも、見たいものにだけカメラを向けているのではあるまいか。




Tetsuya Sato