2013年11月7日木曜日

アポカリプト

アポカリプト
Apocalypto
2006年  アメリカ 138分
監督:メル・ギブソン

森にある狩猟部族の村が襲撃を受け、多数が捕虜となってマヤの都市へ連行され、生贄にされそうになるが、からくも逃げ出したひとりの戦士が追っ手となって現われたマヤの戦士と森で戦う。ストーリーははなはだシンプルである。そして戦士たちはジャングルをひたすらに走り、その有様をカメラワークを駆使して追いかける。殺陣は壮絶で、さすがにメル・ギブソンと言うべきかもしれないが、肉体的にとても痛い。そしてマヤの都市は狂乱と死体にあふれ、ピラミッドの階段からは生首が次から次へと転げ落ち、主人公は沼に沈んで泥にまみれた姿で再び現われ、殺戮をおこなう。
時代も舞台も異なっているが、目につくモチーフは『地獄の黙示録』のそれにしばしば重なり、タイトルもまた明瞭にその事実を語っている。違いがあるとすれば、恐怖と滅亡の向こう側に再生の予感が提示されているあたりであろう。マヤ語による収録にどの程度の意味があったかは疑問が残るし、森の狩猟民の生活ぶりがモダンすぎるのではないかという気もしたものの(家のどこかにテレビがあっても不思議がないくらい)、マヤ文明の再現を試みた美術、メークアップは多彩で見ごたえがあり、狂騒と退廃に満ちた都市の描写だけでも十分に見る価値がある。


Tetsuya Sato