2013年11月25日月曜日

鉄道と戦争の世界史

クリスティアン・ウォルマー『鉄道と戦争の世界史』(平岡緑訳、中央公論社)

戦争における鉄道の使われ方をクリミア戦争、南北戦争、普仏戦争、ボーア戦争、日露戦争、第一次大戦、第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などに取材しながら解説した著作で、著者のクリスティアン・ウォルマーはどちらかと言えば戦史よりも鉄道のほうにくわしいイギリスのジャーナリストということになるらしい。戦時における軍部と輸送機関の関係、運用の実態などを戦争当事国のそれぞれにわたって詳述していて、クリミア戦争やボーア戦争における鉄道の関与、第一次大戦の狭軌鉄道による輸送網など、これまであまり目にすることのなかった情報がいろいろと入っていて参考になる。
ただ残念なことに訳文にいささか難があって、ほとんど考えていない直訳体はどうにかがまんできるとしても、「ナポレオンの大陸軍は250万兵」「軍部は彼らの熱誠に感動した」「列車が出退できなくした」「貨車は旧式で瓦解寸前」といったような面白い表現がほぼ全ページにちりばめられていて。読み進もうとするこちらの意図を激しく阻む仕組みになっている。



Tetsuya Sato