2013年11月30日土曜日

サイン

サイン
Signs
2002年 アメリカ 119分
監督:M・ナイト・シャマラン

とある一家がとうもろこし畑に囲まれた古びた家で暮らしている。父親と息子と娘、こどもたちはまだ幼い。同じ敷地にある離れには父親の弟が暮らしている。ある朝、一家は畑に作られたミステリー・サークルを発見する。保安官が呼ばれるが、近所のろくでなしのしわざというわけでもないらしい。屋根には怪しい人影が現われて、追いかけると目にもとまらない速さで姿を隠す。かと思うと飼い犬が突然襲いかかる。ミステリー・サークルはどうやら世界中に出現しているらしい。テレビをつけると、インドからの映像が流れ出す。町の様子も何か変だ。終末への予感に脅えて告解を始める者もいる。一家の父親はかつて牧師をしていたらしい。こどもたちの母親はしばらく前に死んでいるらしい。ベビー・モニターを空に向けると、まるで誰かが会話をしているような雑音が聞こえてくる。UFOの編隊が世界中の空に出現する。ブラジルではホームビデオにエイリアンの姿が写し取られた。人類は侵略を受けようとしているのだ。窓に板を打ちつけて、家族を守らなければならないのだ。父親は信仰を失っている。母親は交通事故で死んだようだ。息子には喘息の発作があり、小さな娘は目の前の水が汚染されていると信じている。独り身の弟はマイナーリーグの元選手で、ホームラン王であり、かつまた三振王でもあり、今はガソリンスタンドで働いている。妻を失った元牧師は反キリスト者のようになって怒りを叫ぶ。そしてついにその夜がやってくるのである。
シャマランの演出は『アンブレイカブル』よりもふてぶてしくなっている。ぎりぎりのきわどさで様々な要素をつなぎあわせ、見た目に危ういバランスを自信に満ちた手つきで時間とともに安定させていく。ジグソーパズルのようなものではまったくない。パズルのピースならば平坦な場所に並ぶだけだが、シャマランの映画は常に起伏に富んでいる。組み合わされた断片が揺らぎもしない物語になる。あまりにもがっちりしているので結末はかなり早い時期から予測できるし、その結末のものものしさはばかばかしくもあるけれど、あまりにもすごいので見ているこちらはついうっかり感動してしまう。筋書きは地球規模だが、あくまでも個人の物語である。大いなる手の中では偶然というものは存在しないのである。つまり神はグラハム・ヘス牧師から信仰を奪い、そしてそれを前よりも一段と輝かしいものとして、再び牧師の胸に返したのであった。やたらと荘重で悲しいという点を除けば話はフレドリック・ブラウンの『火星人ゴーホーム』。

Tetsuya Sato

2013年11月29日金曜日

アンブレイカブル

アンブレイカブル
Unbreakable
2000年 アメリカ 107分
監督:M・ナイト・シャマラン

主人公デイビッド・ダンは大学のフットボール場で警備員をしている。妻子との間には不可解な距離があり、毎朝、悲しみとともに目覚めている。一方、コミック原画を商う画廊の経営者イライジャ・プライスは生まれつき骨が脆く、常に骨折の恐怖に脅えている。転職のためにニューヨークへ面接に赴いたデイビッド・ダンは、フィラデルフィアへの帰路で鉄道事故に遭遇するが、まったくの無傷で生還する。ただ一人の生存者である。だが、それで生活が変わるわけではない。そこへイライジャ・プライスがガラスの杖をついて姿を現わしてデイビッド・ダンに奇怪とも思える質問を加え、淡々とした日常の中に埋没した記憶の底から次第に意外な事実を掘り起こしていく。イライジャ・プライスが提示した突拍子もない結論に息子は父親に尊敬の目を向け、父親は狼狽しながらも秘められていた使命に目覚めていく。壊れかけていた家庭には愛が戻り、恐るべき事件は解決へと導かれ、最後の握手が驚天動地の結末を出現させる。
早い話、アメコミのヒーロー物なのである。その第1話なのである。そしてヒーロー物としてのあるべきフレームに対していかなる破綻も与えずに、痛みと悲しみに満ちた日常生活が描かれているのである。この筆力には恐れ入った。

Tetsuya Sato

2013年11月28日木曜日

ラストスタンド

ラストスタンド
The Last Stand
2013年 アメリカ 107分
監督:キム・ジウン

フォレスト・ウィテカー率いるなんとなく無能そうなFBIのチームが麻薬王コルテスをラスベガスから国内某所へ秘密裡に移送しようとしていると移送の計画を嗅ぎつけた一味がコンボイに襲いかかってコルテスを奪還、スピード狂のコルテスは1000馬力のスポーツカーに乗り込むと自らハンドルを握ってメキシコ国境を目指し、警察の封鎖線はコルテスとコルテスの配下によってことごとく粉砕され、国境に隣接するアリゾナ州ソマートンの保安官レイ・オーウェンズは町に現われた傭兵部隊とコルテスの関係に気づき、コルテスのたくらみをくじくために副保安官、元海兵隊、武器おたくを率いて立ち向かう。
アーノルド・シュワルツェネッガー復帰第一作で監督は『グッド・バッド・ウィアード』のキム・ジウン。傭兵部隊の隊長がピーター・ストーメア、ソマートンの頑固老人がハリー・ディーン・スタントン。すっかり老けたアーノルド・シュワルツェネッガーはなかなかにいい味を出しているし、オープニングのつかみもいいし、トウモロコシ畑のカーチェイス(お互いに相手が見えない)といったようないいシーンもいろいろあって、漫然と眺めている分にはそれなりに悪くない映画ではあるものの、状況が拡散気味で、時間の経過の処理にあきらかなむらがあり、方向性に乏しい演出は軽さが悪目立ちする傾向がある。もう少し絞り込むことはできなかったのか。


Tetsuya Sato

2013年11月27日水曜日

グッド・バッド・ウィアード

グッド・バッド・ウィアード
Joheunnom nabbeunnom isanghannom
2008年 韓国 129分
監督:キム・ジウン

ユン・テグは列車を襲ったときに宝の地図を手に入れるが、その地図狙って悪党のボス、パク・チャンイがユン・テグを追い、賞金稼ぎのパク・ドウォンがパク・チャンイを追い、さらに地図を狙って馬賊の一味、日本軍も現われる。
1930年代の満州を舞台に西部劇という思いつきは非常によいものの、プロットは雑念が多くて締りがないし、キャラクターはまともな自我を備えていないので、対立関係も動機づけも最後の最後まで明確な形を得ることがない。これでは『続・夕陽のガンマン』からタイトルを引用する意味がない。撃ち合いになるとただもう撃ち合いをしているだけで、状況に対するひねりがないし、それをまた手持ちカメラで撮影するからフレームが妙に小さくなって構図がますます散漫になる。ところどころに凝ったショットが見つかるし、かなり大胆なスタントなどもしているので、もう少しアイデアを出してから腰を据えて画面を作ることはできなかったのか。クライマックスの延々と続く追撃戦は見ごたえがあり、もしかしたらここで体力を使いきってしまったのではあるまいか。いいところもあるけれど、悪いところが悪目立ちする。


Tetsuya Sato

2013年11月26日火曜日

L.A. ギャング ストーリー

L.A. ギャング ストーリー
Gangster Squad
2013年 アメリカ 113分
監督:ルーベン・フライシャー

1949年のロサンゼルスを舞台に警察本部長の密命を帯びた警官たちが町を牛耳るミッキー・コーエンにゲリラ闘争をしかけていく。
犯罪王ミッキー・コーエンがとてもうれしそうなショーン・ペン、パーカー警察本部長がニック・ノルティ、ニック・ノルティの命令で突っ込んでいくのが巡査部長で第二次大戦の不正規戦のプロのジョッシュ・ブローリン、同じく巡査部長で元海軍パイロットで情報通のライアン・ゴズリング、ほかに元情報部、ナイフ使い、やることがまるっきり西部なガンマンとその弟子のメキシコ人。ジョシュ・ブローリンがいい。ライアン・ゴズリングはもうけ役。
監督は『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー。うまくやろうとしているところでいまひとつうまくいかない、という欠点が見えるものの、乗りは軽いしテンポは速いし、キャラクターは楽しいし、ということで悪くない。 


Tetsuya Sato

2013年11月25日月曜日

鉄道と戦争の世界史

クリスティアン・ウォルマー『鉄道と戦争の世界史』(平岡緑訳、中央公論社)

戦争における鉄道の使われ方をクリミア戦争、南北戦争、普仏戦争、ボーア戦争、日露戦争、第一次大戦、第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などに取材しながら解説した著作で、著者のクリスティアン・ウォルマーはどちらかと言えば戦史よりも鉄道のほうにくわしいイギリスのジャーナリストということになるらしい。戦時における軍部と輸送機関の関係、運用の実態などを戦争当事国のそれぞれにわたって詳述していて、クリミア戦争やボーア戦争における鉄道の関与、第一次大戦の狭軌鉄道による輸送網など、これまであまり目にすることのなかった情報がいろいろと入っていて参考になる。
ただ残念なことに訳文にいささか難があって、ほとんど考えていない直訳体はどうにかがまんできるとしても、「ナポレオンの大陸軍は250万兵」「軍部は彼らの熱誠に感動した」「列車が出退できなくした」「貨車は旧式で瓦解寸前」といったような面白い表現がほぼ全ページにちりばめられていて。読み進もうとするこちらの意図を激しく阻む仕組みになっている。



Tetsuya Sato

2013年11月24日日曜日

クルードさんちのはじめての冒険

クルードさんちのはじめての冒険
The Croods
2012年 アメリカ 98分
監督:クリス・サンダース、カーク・デミッコ

地球が大規模な地殻変動にみまわれているころ、火も道具も知らない上にどうやら脳みそもない穴居人の一家が洞窟にこもって野蛮な生活を送っていると、一家の娘の前に火が使えて道具も持っている原始人の青年が現われて大地が引っくり返るので遠くの山に逃げなければならないと告げ、それから間もなく地震が起こって一家の洞窟をつぶし、隠れ家を失った一家は原始人の青年を捕えて新たな洞窟を探す旅に出るが、背後から天変地異が迫ってくると創造性を備えて生産力もある原始人の青年がそのうちにリーダーシップを発揮するようになり、洞窟を探すのをあきらめて遠くに見える山を目指す。 
原案はジョン・クリーズ、監督は『ヒックとドラゴン』のクリス・サンダース。登場人物の思いっきり穴居人な造形にまず驚かされ、それが外見だけではなくて中身までそうだと気がついてまた驚いた。けものには失礼だが、けものぶりが半端ではない。プロットはきわめてシンプルだが、少々毒を含んだユーモアと豊富なアクション、背景描写の緻密さで飽きさせない。派手な色使いの原始世界とそこに跋扈する奇想天外な動物たちはどこか『アバター』へのあてこすりがあるような気がした。『アバター』もこれくらいやっていたら傑作になっていたことであろう。やたらと頭でっかちなサーベルタイガーがとてもかわいい。 


Tetsuya Sato

2013年11月23日土曜日

アフター・アース

アフター・アース
After Earth
2013年 アメリカ 98分
監督:M・ナイト・シャマラン

人類が荒廃した地球を捨てて新たな惑星に植民すると、そこには先住民がいて人間の恐怖を嗅ぎ取る目のない化け物をけしかけてくるので、レンジャー部隊の隊員のひとりが恐怖心を捨てて立ち向かい、英雄となったこの隊員はレンジャーの将軍になり、その息子もまたレンジャーを目指すが試験に落ちて候補生にとどまり、ふてくされる息子との関係を気にかけた将軍は息子を自分が指揮する訓練プログラムに招くことにして問題の化け物を搭載した宇宙船に乗って出発するが、宇宙船は途中で小惑星嵐に遭遇して遭難、嵐を避けるためにワープした先で惑星に不時着すると生き残ったのは将軍と息子の二人だけで、しかもそこは人類に敵対する生物で満たされた地球で、船は真っ二つに割れていて緊急信号を送るためには割れたもう一方の船体を探して百キロの旅をしなければならないということになるが、将軍は足を骨折しているので息子を送り出し、言うことをろくすっぽ聞かない上にやたらとめそめそする息子を遠くから叱咤していると通信も途切れ、宇宙船に積み込んでいた化け物が息子に襲いかかる。 
プロダクションデザインには見るべきところがあるし、撮影も美しい。しかし編集はまとまりが悪く、いくつかのショットは凝ったつもりなのかもしれないが、どちらかと言えばわずらわしい。演出は張りに乏しく、主人公のキャラクターはおそらく単純すぎてジェイデン・スミスを生かしていない。ところでまったく飛び道具がない、というのはなにか理由があるにしても不自然であろう。緊急通信装置は墜落のショックで壊れるし、酸素補給用のケースもちょっと暴れただけで壊れるし、ろくな鎮痛剤も積んでいない。こういう宇宙船には絶対に乗りたくないと思う。 


Tetsuya Sato

2013年11月22日金曜日

ハービー/機械じかけのキューピッド

ハービー/機械じかけのキューピッド
Herbie: Fully Loaded
2005年 アメリカ 101分
監督:アンジェラ・ロビンソン

シリーズ五作目。ストックカー・レースの名門の家に生まれたマギー・ペイトンはつまらない理由で父親からレースへの参加を禁じられていたが、大学卒業祝いに車をもらえるという話になって、それでスクラップ場でハービーと出会った結果、ハービーに引きずられるようにしてレースに参加するはめになり、もともと才能もあったことからチームの欠員を補うためにNASCARネクステル・カップに出場する。
マイケル・キートンが父親、マット・ディロンがストックカー・レースの王者で、当然ながら悪役である。主人公マギーの苦悩がうざったいが、内容はそれなりに盛りだくさんで、だれ場を見せないような工夫があり、水準はクリアしている。ただ『レーシング・ストライプス』でもそうだったけど、この手の映画に登場する父親の理不尽な頑固ぶりは単なる機能不全のようにしか思えず、はっきり言って意味がわからない。
ハービーはまばたきをする、怒る、笑う、からだを震わせて水をはじく、などの芸を身につけているほか、爆転などの荒技も披露する。冒頭、ひどく落ちぶれた姿で登場し、スクラップ場でスクラップ寸前になっているような有様で、必死の抵抗が痛々しい。中盤ではデモリションショーに投げ込まれてここでもひどい目に遭うけれど、幸いなことに立ち直りは早いみたいで、黄色い新型ビートルと恋に落ちる。ただ、こうなってくると傍から見た場合、ハービーの行状はほとんどホラー映画のそれであろう(本人はドライブイン・シアターでホラーを見て震えていたが)。レースシーンは見ている範囲(四作目のブルース・キャンベル主演のテレビ版を見ていない)ではいちばんそれらしい仕上がりになっていた。

Tetsuya Sato

2013年11月21日木曜日

ラブ・バッグ/モンテカルロ大爆走

ラブ・バッグ/モンテカルロ大爆走
Herbie Goes to Monte Carlo
1977年 アメリカ 105分
監督:ヴィンセント・マクヴィティ

シリーズ三作目。一作目のレーサー、ジム・ダグラスが再び登場し、ハービーとともにフランス縦断レースに参加する。ところが同じころ、パリで巨大なダイヤモンドの盗難事件が発生し、そのダイヤモンドがハービーのガソリンタンクに隠されたことから、ハービーは悪党どもにしつこく狙われることになる。
コメディ部分は全体に野暮ったく、鈍感さで笑いを取ろうとしているのか、それとも単に鈍感なのか、いささか判断がつきにくい。ハービーは同じレースに参加している白いランチア(ジゼルという名前がついている)に恋をして、パリの町でデートするほか、モンテカルロでも海辺に並んで夜空に浮かぶ花火を見上げたりする。 

Tetsuya Sato

2013年11月20日水曜日

続ラブ・バッグ

続ラブ・バッグ
Herbie Rides Again
1974年 アメリカ 88分
監督:ロバート・スティーブンスン

サンフランシスコの建築王にして取り壊し王のアロンゾ・ホーク氏はローマのコロセウムを見ても「いつかショッピングセンターにしてやる」と叫ぶほど破壊と建築に取り憑かれていたが、サンフランシスコに建築予定のホーク・センターは立ち退きを拒む一人の老婦人のために計画を阻まれていた。そこでアロンゾ・ホーク氏は手段を選ばない作戦に出るが、その老婦人を守るハービーによってひどい目に遭わされる。
悪いやつはひたすらに悪く、善人は悪に対して容赦を知らない、ということでアロンゾ・ホークに扮したキーナン・ウィンは実に楽しそうに間抜けな悪役に徹しており、対するヘレン・ヘイズは泰然とした老婦人を演じて魅力的である。一作目に比べると説明が不要な分、展開もすばやく、骨格が単純すぎるほどはっきりとしているので話は結末に向かってひたすらにエスカレートし、最後はほとんど西部劇の乗りになる。ハービーはレースから遠ざかって留守番を強いられている模様で、かつての栄光を夢に見ながら老婦人を守るという地道な仕事に精を出し、危急のときにあたってはそこら中のフォルクスワーゲンに声をかけて大群になって押し寄せる。 

Tetsuya Sato

2013年11月19日火曜日

ラブ・バッグ

ラブ・バッグ
The Love Bug
1968年 アメリカ 107分
監督:ロバート・スティーブンスン

落ち目の、というよりも才能に乏しいレーサー、ジム・ダグラスが金もないのに自動車ディーラーの店で車を物色していると、一台のフォルクスワーゲンが鼻を擦り寄せてくる。その後の事情からその車はジム・ダグラスが引き取ることになり、ジム・ダグラスの友人でチベット仏教を修めたテネシーによってハービーと命名されるが、ハービーは自分の意思を持った車で、ジム・ダグラスがそのハービーに乗ってレースに出ると連戦連勝ということになり、ハービーを憎む自動車ディーラー兼レーサーのピーター・ソーンダイクは卑劣な手段によってハービーを葬り去ろうとたくらんだりする。
どちらかと言えばだらっとした作りの映画だが、ハービーの利かん気ぶり、悪役デヴィッド・トムリンソンのブラック大魔王ぶりがそれなりに楽しくて、適当に笑いながらなんとなく最後まで見てしまう。ただ最後のヨセミテのレースでのハービーのショートカットは反則であろう。 

Tetsuya Sato

2013年11月18日月曜日

スプリング・ブレイカーズ

スプリング・ブレイカーズ
Spring Breakers
2012年 アメリカ 93分
監督:ハーモニー・コリン

灰色の日常に埋もれていることを嘆く女子大生の仲良しグループが春休みを迎えてフロリダへいこうとたくらむが全員のお金を合わせても全然足りない、ということで水鉄砲とハンマーで武装してダイナーを襲撃して金を奪い、バスに乗ってフロリダへ出かけてビーチでパーティ三昧の生活を始めると警察に踏み込まれて逮捕され、麻薬使用の罪で罰金か拘留を選べということになるけれど罰金を払うお金がない、というところへエイリアンと名乗るストリート系のギャングが現われてかわりに罰金を払ってくれるので仲良しグループはエイリアンのところへ転がり込んでストリートのみなさんと交流するが、さすがにこれは怖いと思った一人が家に帰ることに決め、残った三人のうちの一人もエイリアンと対立するグループから発砲されると家に帰ることに決め、残った二人はエイリアンとともに対立するギャングの本拠に殴り込む。
エイリアンがジェームズ・フランコ、女の子たちはほぼ識別不能。構成に一定のスタイルを認めることができるし、その範囲でのリズムを認めることもできるが、考えてやっているというよりも感性にしたがっている、という感じで、冒頭のビーチにおける乱痴気騒ぎから大学につながるあたりからすでにその傾向がはっきりと現われているので、見ているほうも適当に感性に流されないと受け入れるのが難しくなる。つまり、わたしにはしんどかった。


Tetsuya Sato

2013年11月17日日曜日

バビロン A.D.

バビロン A.D.
Babylon A.D.
2008年  アメリカ/フランス/イギリス 90分
監督:マチュー・カソヴィッツ

シャーロット・ランプリングが率いる宗教未満の怪しい団体が宗教以上になることを目指して怪しい奇跡を求めていた頃、新セルビアに住む傭兵のヴィン・ディーゼルは怪しいことを生業にしているジェラール・ドパルデューから運び屋の仕事を持ちかけられ、ミッシェル・ヨーの修道女と少女の二人をアメリカまで50万ドルで運ぶことになり、カザフスタンからロシアへ移動し、ウラジオストクで怪しい密輸業者のマーク・ストロングに助けを求め、潜水艦でベーリング海峡を渡り、無人戦闘機の攻撃を退けてカナダからアメリカへ入って目的地のニューヨークに到達するが、そこで少女の秘密のようなものが明らかにされ、死んだヴィン・ディーゼルを少女の父親のランベール・ウィルソンが蘇らせる。
ややスローテンポだが、個々の場面は作り込まれている。未消化のまま投げ出されている部分が見えるものの、視覚的な描写はエンキ・ビラルの描いた未来社会のようなところがあり、そう考えると未消化の部分もあっさりとした人物描写もそういうものか、という気になってくる。メラニー・ティエリー扮する少女オーロラの特異な美貌は見ごたえがある。シャーロット・ランプリングの悪役ぶりも悪くない。 

Tetsuya Sato

2013年11月16日土曜日

タイタン A.E.

タイタン A.E.
Titan A.E. 
2000年 アメリカ 95分
監督:ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン

30世紀の未来、エネルギー生命体のエイリアンによる攻撃で地球は消滅、生き残ったわずかな人類は難民となり、苦難の道を歩み、昆虫型その他のエイリアンに虐待されている。だがやがて人類の未来を託した巨大な宇宙船が宇宙の彼方の甚だ面倒な場所に隠されていることが判明し、一人の若者が探索の旅に出る。
冒頭、エイリアンの攻撃の画面を見ているうちに、こちらはなんとなく「黄金の船が、おお、おお、おお」などと呟いていたが、残念ながらそういう話ではなかった(当然だが)。実を言えばこれに限らず、話を壮大にするために地球を吹き飛ばすというやり口はあまり好きではない。ほかにいくらでもやりようはある筈で、話を作るために諸々の生き物に迷惑をかける必要はないと考えるのである。かなりリアルなCGを背景に、ロトスコープでアニメートされたと思しきキャラクターが動きまわり、両者の質感にかなりの落差があって、これに慣れるのに少々手間取った。話の筋立ては格別目新しいものではないし、単純な割りにはキャラクターの作り込みができていない。ただ、どちらかと言えばレトロ調の宇宙船はたいそうよろしい仕上がりで、それが元気に飛び回るシーンはけっこうな感動物。なんでキャプテン・フューチャーか何かにしなかったのか?  

Tetsuya Sato

2013年11月15日金曜日

空飛ぶ戦闘艦

空飛ぶ戦闘艦
Master of the World
1961年 アメリカ 102分
監督:ウィリアム・ウィットニー

ジュール・ヴェルヌの『征服者ロビュール』と『世界の支配者』を映画化したということになっている。征服者ロバーは空中船アルバトロス号を使って各国の軍隊を無差別に攻撃し、脅威を与えることで世界を武装解除しようと企んでいた。目的は平和であったが手段に誤りがあったので、ロバー船長とアルバトロス号は悲劇的な最期を迎えることになる。たぶん『世界の支配者』の方を小学校の頃に読んだきりなので、原作のストーリーはほとんど記憶していない(もう少し派手な話だったような気がするが)。
船長がヴィンセント・プライス、船長の理想を理解しながらもアルバトロス号の爆破を企む合衆国政府の役人がチャールズ・ブロンソン、リチャード・マティスンの脚本は大時代なストーリーを90分強に大過なくまとめているという感じである。とはいえ特殊効果は水準が低いしアルバトロス号のミニチュアには愛がない。加えて船内のセットは安手で風格に乏しいし、アルバトロス号による攻撃の場面はストック・フィルムの使いまわしでどうにも迫力を欠いている。映画化した、という以上の意味はあまりない。 

Tetsuya Sato

2013年11月14日木曜日

ザ・カウントダウン 地球大戦争

ザ・カウントダウン 地球大戦争
The War of the Worlds
2005年  アメリカ 135分 VIDEO
監督:ティモシー・ハインズ

けったいな邦題がついているけど、H.G.ウェルズ『宇宙戦争』のおおむね忠実な映画化で、19世末のイギリスが舞台になっている。とはいえ涙が出るような低予算で、出演者はいったいどこから集めてきたのかと感心するほどの素人ばかり(エンディング・クレジットを見た感じでは、ご近所で集まってご家族単位で出演していたような気配がある)、音声はアフレコで口の動きがあっていない、絵は丸っきりの自主製作映画で画面は奥行きに乏しく(人物の背景にしばしば写真が使われており、その場合、奥行きはまったくない)、あまりにも安っぽいのでモンティパイソンのスケッチを見ているような気分になってくるし、CGはCGというよりも(その安っぽさだけが)テリー・ギリアムのアニメに近い。おそらく最大の問題は安っぽさを逆手に取らずに、かと言って格別の創意工夫もないままに大真面目にがんばってしまったところであろう。つまり恐るべき低予算にもかかわらず19世紀末英国の衣装や乗り物、軍隊までできる範囲で再現し、火星人も出して戦闘機械を動き回らせている。そのあたりはいちおうの評価をしなければならないのかもしれないが、うっかり見てしまうと、やはりそれなりのダメージをこうむることになるだろう。ちなみにオリジナルは179分あった模様。 


Tetsuya Sato

2013年11月13日水曜日

ガルーダ

ガルーダ
Garuda
2004年 タイ 112分
監督:モントン・アラヤンクン

バンコクの地下鉄工事現場で休眠状態のガルーダが発見され、電気が通って蘇ると暴れ始める。中盤は地下で軍隊と戦い、終盤は地上に現われてバンコク市民に襲いかかり、軍隊と戦う。
演出は鈍感で集中力に乏しく、登場人物は知能が低く、脚本は瑣末なところにまで対立関係を持ち込んでいちいち喧嘩をしないと話が前へ進まないという最悪のパターンを踏み続ける。SFXも感心できるレベルではない。

Tetsuya Sato

2013年11月12日火曜日

生体兵器アトミックジョーズ

生体兵器アトミックジョーズ
Blue Demon
2004年 アメリカ 89分 VIDEO
監督:ダニエル・グロドニク

軍の委託を受けた海洋研究所で遺伝子操作したサメを沿岸防衛に使う研究がおこなわれていて、案の定というか、なんというか、それ以前の話であろう、という感じで六週間もほったらかしにされていた水中フェンスの破れ目からサメが逃げ出してしまうので、離婚直前の状況にある科学者夫婦が互いを励ましながら追いかける。
研究所の所長が垂直方向に著しくチャレンジされていて、だから執務机を台の上に乗っけているとか、タカ派の将軍が近づくたびに兵士たちが敬礼を繰り返すとか、ある種のコミック演出が試みられているあたりはもしかしたら評価の材料になるのかもしれない。とはいえ登場人物は例によってダンゴムシ程度の知能も備えていないし、話はどうしようもないほど砕けていて、場面が変わっても前の情報がほとんど後ろに伝わっていない。つまりダンゴムシの伝言ゲームを見ているかのような趣があり、それはそれで興味深いところではあるが、それならば本当にダンゴムシにやらせるべきであろう。そうすれば問題の所在があきらかになる。サメのCGは古い教育番組の添え物のレベルで人物とはほとんどリンクしない。水上から目撃される場面ではハリボテのヒレが使われているが、上半分は乾いていた。なお科学者夫婦のうちの妻のほうを演じているディディ・ファイファーはミシェル・ファイファーの六つ年下の妹だという。

Tetsuya Sato

2013年11月11日月曜日

ダーウィンの悪夢

ダーウィンの悪夢
Darwin's Nightmare
2004年  オーストリア/ベルギー/フランス/カナダ/フィンランド/スウェーデン 112分
監督:フーベルト/ザウパー

ビクトリア湖畔のタンザニアの町を中心としたルポルタージュ。
空港管制官(無線がないので信号灯で飛行機に合図を送っている)、古めかしいイリューシンのパイロット(出稼ぎのウクライナ人)、パイロット相手の売春婦、魚肉加工工場のオーナー、ストリートチルドレン(魚肉の梱包材を焼いて煙を吸っている)、漁師(HIV感染で月に10人以上死亡し、漁に出ればワニに食われる)、地元の牧師、生活のために戦争の到来を望む政府機関の警備員(弓を持っていて、泥棒を発見すると毒矢を放っているらしい)などが登場してそれぞれに語り、輸送機が往路で武器を運んでいる可能性について言及があり、現地タンザニアの貧困と飢餓に触れ、加工後の魚のアラ(蛆が湧いている)の再加工風景(揚げ物にして住民に売る)などが紹介される。
映像はきわめて衝撃的ではあるものの、取材クルーの立ち位置とその周囲の状況は最後までクリアになることはない。たとえば舞台となっているムワンザは別の資料によると人口50万人を越える都市らしいが、画面には寒村のような光景ばかりが現われる。行政機関のようなものは一切登場しない。国立の水産研究所が出てくるものの、映し出されるのはそこのフェンスと夜警だけで、カメラは一歩もなかへ入ろうとしない。取材を断られたから、というのではなく、そもそもコンタクトを取ろうとしていないかのように見えるのである。現地で見たまんま、というよりも、見たいものにだけカメラを向けているのではあるまいか。




Tetsuya Sato

2013年11月9日土曜日

旅情

旅情
Summertime
1955年 イギリス/アメリカ 102分
監督:デヴィッド・リーン

アメリカの独身女性ジェーン・ハドソンは貯金をためて人生で失ったものを取り戻すためにひとりで旅に出てヨーロッパを訪れ、ヴェネチアに到着してペンションの部屋に落ち着くと観光には出かけないでアメリカから持ち込んだバーボンを飲んではあたりを歩くカップルに羨望に満ちたまなざしを向け、ようやく腰を上げてサンマルコ広場を訪れてお茶をしているとそこでもカップルに羨望のまなざしを向け、そこで至近距離から発せられるイタリア男の視線に気づいて自意識過剰になってその場から逃れ、翌日たまたま訪れた骨董品店でゴブレットを買おうとしていると応対に現われたのがそのイタリア男レナート・ディ・ロッシで、あくる日にはジェーン・ハドソンのペンションまで押しかけてきてお茶に誘い、一度は拒んだジェーン・ハドソンも結局は誘い出されることになり、そのままレナート・ディ・ロッシと一気に深い関係になるが、ふとしたことからレナート・ディ・ロッシにが妻子持ちであることを知って激しく傷つき、レナート・ディ・ロッシはジェーン・ハドソンの前に現われるとジェーン・ハドソンの幻想を責め、自分こそがジェーン・ハドソンにふさわしいというようなことを主張するとジェーン・ハドソンもまた現実を受け入れ、二人は相思相愛の関係になってジェーン・ハドソンは一夏のロマンスを思い出にヴェネチアを去る。
ステーキではなくラビオリを食べなさい、は有名な台詞だが、ロッサノ・ブラッツイはどう見てもラビオリではないだろう(サルティンボッカくらいかな)。ダイアログがよくできているし、デヴィッド・リーンの演出は非常にしっかりとしているが、もしかしたらキャサリン・ヘップバーンはややオーバーアクション気味かもしれない。もしかしたらイギリス人の監督がアルプスの南側をまたワンダーランドに仕立てるかわりにアメリカ女性のカリカチュアをヒロインに配置したのかもしれない。



Tetsuya Sato

2013年11月8日金曜日

インフォーマント!

インフォーマント!
The Informant!
2009年 アメリカ 108分
監督:スティーブン・ソダーバーグ

90年代初頭、実在する穀物メジャー、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドの重役でリシンの製造を担当するマーク・ウィテカーは製造ラインの不調に困惑していたが、そこへ味の素から脅迫電話がかかり、製造ラインの不調にスパイの存在がかかわっている可能性が浮かび上がるので、会社はマーク・ウィテカーの報告にもとづいてFBIに捜査を要請、FBIは味の素との接点にいるマーク・ウィテカーと接触するが、ここでマーク・ウィテカーが妙なことを言い始めたことからリシンの価格に関する国際カルテルの存在が明らかになり、以降、マーク・ウィテカーはFBIに協力して会社の情報を流し続けるが、このマーク・ウィテカーという人物の行動には微妙なむらがあり、どうもおかしいと思っているうちになにやら振り回されているという恐ろしい話で、いちおう実話をもとにしているらしい。
マット・デイモンが双極性障害の患者を演じてなんとも言いようのない味を出し、それに振り回されるFBI捜査官を演じたスコット・パクラがまたいい味を出していた。どこか冷笑的な演出もなかなかに気が利いているが、なにしろソダーバーグなので観客の素朴な笑いをそのままにはしてくれない。けっこう怖いのである。ふつうに都市があってビルがあって道があって、それでパースが取れるとソダーバーグは調子がいい。




Tetsuya Sato

2013年11月7日木曜日

アポカリプト

アポカリプト
Apocalypto
2006年  アメリカ 138分
監督:メル・ギブソン

森にある狩猟部族の村が襲撃を受け、多数が捕虜となってマヤの都市へ連行され、生贄にされそうになるが、からくも逃げ出したひとりの戦士が追っ手となって現われたマヤの戦士と森で戦う。ストーリーははなはだシンプルである。そして戦士たちはジャングルをひたすらに走り、その有様をカメラワークを駆使して追いかける。殺陣は壮絶で、さすがにメル・ギブソンと言うべきかもしれないが、肉体的にとても痛い。そしてマヤの都市は狂乱と死体にあふれ、ピラミッドの階段からは生首が次から次へと転げ落ち、主人公は沼に沈んで泥にまみれた姿で再び現われ、殺戮をおこなう。
時代も舞台も異なっているが、目につくモチーフは『地獄の黙示録』のそれにしばしば重なり、タイトルもまた明瞭にその事実を語っている。違いがあるとすれば、恐怖と滅亡の向こう側に再生の予感が提示されているあたりであろう。マヤ語による収録にどの程度の意味があったかは疑問が残るし、森の狩猟民の生活ぶりがモダンすぎるのではないかという気もしたものの(家のどこかにテレビがあっても不思議がないくらい)、マヤ文明の再現を試みた美術、メークアップは多彩で見ごたえがあり、狂騒と退廃に満ちた都市の描写だけでも十分に見る価値がある。


Tetsuya Sato

2013年11月6日水曜日

ヒッチコック

ヒッチコック
Hitchcock
2012年 アメリカ 98分
監督:サーシャ・ガヴァシ

『北北西に進路を取れ』の公開のあと、ヒッチコックは新作のネタを探し求めてロバート・ブロックの『サイコ』に出会い、パラマウントが出資を渋るので自前で予算を組んで製作に取りかかるが、それまでヒッチコックを影で支えてきた妻アルマ・レヴィルはヒッチコックを支えることを拒んで脚本家のウィットフィールド・クックと組んで仕事を進め、ヒッチコックは妻とウィットフィールド・クックとの関係を疑い、スタジオには苛立ちを抱き、ジャネット・リーにはある種の感情を抱き、ヴェラ・マイルズには裏切られたような思いを抱き、怒りを抱えた内心はエド・ゲインに接続する。 
ヒッチコックがいろいろと特殊メイクをしたアンソニー・ホプキンス、アルマ・レヴィルがヘレン・ミレン、ジャネット・リーがスカーレット・ヨハンソン。ヒッチコックの内面に踏み込んでエド・ゲインに接続する手法は好みの問題だとしても、『サイコ』の映画製作にかかわるプロセスは省略され過ぎであろう。素材に対してこの取り組みは凡庸すぎる。 


Tetsuya Sato

2013年11月5日火曜日

彼女はパートタイムトラベラー

彼女はパートタイムトラベラー
Safety Not Guaranteed
2012年 アメリカ 85分
監督:コリン・トレボロウ

シアトル・マガジンの企画会議で記者の一人ジェフが時間旅行の同行者を求める新聞広告のことを話題に上げ、ジェフがダリウスとアーマウのインターン二人をともなって広告主がいる海岸の町に訪れるが、調べてみると広告主は食料雑貨店で店員をしているケネスという男で、早速ジェフが接近を試みるとお愛想笑いを浮かべているというような理由で追い払われ、父親からも暗いと言われているダリウスが代わって近づいて時間旅行の同行者として認められると、それからは森を走ったり、射撃をしたりという訓練が始まり、取材をダリウスにまかせたジェフは、取材に訪れたこの町にいたことがあって、かつての恋人がまだ住んでいることを確かめるとそちらの方面へ話を傾け、ダリウスとケネスは次第に親密さをまして関係を進め、いよいよ時間旅行へ旅立つというときになって政府関係者とおぼしき男たちがケネスを狙う。 
ヒロインのダリウスがオーブリー・プラザで、これがエキセントリックで魅力的。登場人物は配役も含めてよく考慮され、ほどよく圧縮されたダイアログは洗練されている。演出はおおむねにおいて淡々としているが、複合的な構造を散漫にならずにまとめているし、全体に短めなカットが確実に機能しているのでリズム感が乏しいという印象は残らない。新人の作品としては水準以上ということになるだろう。最後になってまさか本当にタイムマシンが登場するとは思わなかった。 

Tetsuya Sato

2013年11月4日月曜日

暴走!ニトロ・バスターズ

暴走!ニトロ・バスターズ
New Kids Nitro
2011年 オランダ 78分
監督:ステフェン・ハールス

オランダ、北ブラバントにあるマースカンチェというはなはだ魅力の乏しい小さな町にはなはだ素養の低い五人の若者が暮らしていて、前作でたしかスカッドミサイルで壊滅したはずのスキンデルの町の住民と喧嘩を始めて罵声を浴びせあったりストリートレースをしたりしているとフリースラントに隕石が落下して隕石をなめた乳牛が大量の牛乳を出すようになり、フリースラントの住民がこの牛乳を飲んだところゾンビになってうろつきだすので状況を座視できないと判断した国防省はフリースラント周辺地域にフリースラントでゾンビが暴れているという情報を流して勝手に対処するように促すが周辺地域が設置したやる気のない封鎖線をフリースラントのゾンビは簡単に突破するので国防省はマースカンチェの例の五人に対処を頼み、五人はフリースラントに乗り込んでいってあれやこれやとあった末にゾンビに包囲され、窮地に立った五人はだったらストリートレースで勝負だ、ということでフリースラントのゾンビにレースで挑戦する。
前作に続いてとっても低俗で、思わず目を背けるようなシーンもあるし、ゾンビの最終解決方法はとてもではないが口に出せない。かなり頭の痛い映画ではあるが、ボルテージの高さを持続させるのは偉いと思う。 


Tetsuya Sato

2013年11月3日日曜日

暴走!ターボ・バスターズ

暴走!ターボ・バスターズ
New Kids Turbo
2010年 オランダ 84分
監督:ステフェン・ハールス

オランダ、北ブラバントにあるマースカンチェというはなはだ魅力の乏しい小さな町にはなはだ素養の低い五人の若者が暮らしていて、北ブラバントに不況の波が襲いかかると、たぶん不況の波とはまったく無関係に、ただもう満足に仕事ができないという理由で解雇されて、それで失業給付を受けるとその金でビールを買い、駄菓子を買い、ポルノを買い、たばこを買い、金がなくなると役所に押しかけて担当者に暴力をふるい、その結果として給付を打ち切られていよいよ金がなくなり、督促状のたぐいを無視していると回収業者が現われるので回収業者にも暴力をふるい、回収業者が警官を連れてやってくると今度は警官に暴力をふるい、警察が武装して家を包囲すると逃げ出してあれやこれやと脈絡もなく悪の限りを尽くし、北ブラバントで発生した暴動はこの五人の行状に原因があるのは火を見るよりもあきらかであったので、状況を座視できないと判断した国防省は空爆を決定、たぶん座標を間違えて隣の町スキンデルを壊滅させるとベルギーのせい、と言い逃れをして特殊部隊を送り込み、逃走中の五人は半端ではない対独協力者から武器を手に入れて反撃する。
北ブラバントというのがどういう土地なのか知らないけど(オランダ国防省も知らないらしいが)、銃弾がどこからともなく飛んでくるし、なにかというと車が突っ込んできてひとを踏みつぶす。で、主人公五人組は察するに地元で鍛えられたせいなのか、車にはねられても死なないし、銃で撃たれても死なない。そして誰もなにも考えていないので次の瞬間になにが起きるかわからない。田舎者をネタにした醜悪で猥雑で暴力性の強いコメディだが、そこはかとなく漂う批評性は『サウスパーク』に通じるところがある。構成面から眺めると映画的な強度にやや欠けるものの、わけのわからないパワーがあって、けっこうおもしろい。 


Tetsuya Sato