2013年10月9日水曜日

戦火の勇気

戦火の勇気
Courage Under Fire
1996年 アメリカ 117分
監督:エドワード・ズウイック

湾岸戦争の話である。夜間の戦車戦が砂漠で始まり、アメリカ陸軍のサーリング中佐が指揮する戦車隊がイラク軍の陣地に攻撃を加える。さらにイラク軍の戦車部隊と交戦するが、このときイラク軍の戦車がアメリカ軍の戦車の車列に紛れ込み、指揮官のサーリング中佐は味方の戦車を敵と誤認して攻撃を加え、親友を戦死させてしまう。戦後、中佐は身分を国防省に移し、陸軍では中佐の行動を調べるために審問が開かれ、結審に先だって不問に付されることが中佐本人に内示される。だが戦死した兵士の家族には、死亡の原因が友軍の攻撃であることは知らされていない。サーリング中佐は胸にわだかるものを抱え、酒に逃れて家族との関係を損なっていく。そこへ直属上官の准将から新たな命令が与えられた。中佐は命令にしたがって、戦死した一人の将校が名誉勲章にふさわしいかどうかを調べ始める。
調査の対象となったウォールデン大尉は救急ヘリコプターのパイロットで、イラク軍の攻撃を受けた補給班を救った英雄であった。サーリング中佐はまず補給班のクルーと面談し、継いでウォールデン大尉のクルーとも面談する。中佐は証言の中に矛盾を見つけ、真相を求めてヘリコプターのクルーを追及し、真相を求めるあまり時間をかけて准将から叱責を受け、調査からはずされてもなお追及をやめようとしない。戦死したウォールデン大尉のために真実を伝えなければならないと考えたからである。そう考えながら、中佐は自分自身の罪を問うていたからである。
で、最後になると涙なしには聞けないような痛々しい事実が明らかになるわけだけど、とにかく生真面目な作りに好感が持てる。デンゼル・ワシントンは心に重荷を抱えた陸軍中佐を熱演しているし、メグ・ライアンも努力家の女性兵士という役を実にそれらしく演じている。脇役連もみないい演技をしていて、ルー・ダイアモンド・フィリップスはほんとに壊れているし、マット・デイモンの看護兵はとにかくかわいそうに見えるのである。スコット・グレンは例によっていい味を出しているし、さらに嬉しいのは准将役のマイケル・モリアーティで、これは意外なまでに風格があった。淡々として抑制された演出はドラマを盛り上げ、そしてエドワード・ズイックの作品の特徴ではあるが、戦闘場面に迫力がある。まがりなりにも軍事行動をしているように見えるのである(ただし毎度のことで、位置関係が把握しにくいという欠点がある)。内容が内容だけにアメリカ軍の協力がある筈はないので、おそらく本物はヒューイ・ヘリコプターと若干の車両くらいであろう。M1やT-54、A10、アパッチなどはモックアップやミニチュアを使っていると思うのだけど、これがまたよくできていた。ジャーナリスティックな関心を個人の名誉にすりかえるあたりに少々難が見えるものの、とにかく迫真の戦争映画なのである。



Tetsuya Sato