2013年8月29日木曜日

荒野の用心棒

荒野の用心棒
Per Un Pugno Di Dollari
1964年 イタリア 100分
監督:セルジオ・レオーネ

国境のメキシコ側に小さな町があり、二人のボスに仕切られている。そこへ現われた流れ者のガンマンが自分をあっちに売りこっちに売りしているうちに一方が一方によって根絶やしにされ、残る一方もガンマンによって滅ぼされる。
黒澤明『用心棒』の翻案。ただしプロットは大幅に変更されていて、具体的に似ていると言えるのは冒頭の腕試し、あとは袋だたきにされたガンマンが奇怪な方法で勝利を得るところくらいであろう。わたしとしては胸に仕込んだ鉄板や拳銃対ウィンチェスターの決闘よりも、シンプルに宙を飛ぶ刺し身包丁のほうが好みである(ただダイナマイトを吹っ飛ばして自分で砂塵を作ってから登場する場面は何度見ても笑えるし、そのあとの構図は抜群にかっこいいと思う)。仲代達矢に相当するジャン・マリア・ヴォロンテの役柄は凶悪無比に強化され、オリジナルで小さくまとめられていたエピソードは大きく膨らまされ、ユーモアは影をひそめている。クリント・イーストウッド扮する流れ者は三船敏郎に比べると遥かに軽く、若々しくて、それだけに足元が危なそうな雰囲気があり、殴られたりするとひどく痛々しい。 



Tetsuya Sato