2013年8月22日木曜日

慰めの報酬

慰めの報酬
Quantum of Solace
2008年 イギリス/アメリカ 106分
監督:マーク・フォースター

話は『カジノ・ロワイヤル』の結末からそのまま続き、ボンドは脚を撃ち抜かれたホワイト氏をシエナ市内に運び込む。そこで情報機関に裏切り者がいることを知らされたボンドは次の手がかりを求めてハイチへ飛び、謎の女性カミーユと出会い、カミーユを追ってグリーン氏を発見し、グリーン氏を追って国際的な陰謀組織の存在にたどり着く。その間、手がかりを端から死亡させることでMから非難され、停職を食らい、それでも孤軍奮闘して陰謀を暴き、グリーン氏を追い詰める。
『カジノ・ロワイヤル』の結末で一応は名乗りを上げたものの、ダニエル・クレイグ扮するボンドはボンドとしてのキャラクターを成立させていない。シェイクしたマティーニをなんだかわからずに六杯も飲み干しているボンドはやはりボンドではないのである。なんといっても、まずダニエル・クレイグであり、その野良犬じみた強烈な存在感はあるべきジェームズ・ボンドの姿をかすませてしまう。だから、それでいいのである。挙動は実にシャープだが、それでもなんだかぞんざいで、ついでになんでもかんでも投げ捨てる。もうPPKはやめにして、グロックを持たせるべきであろう。対するマチュー・アマルリックはその個性によって印象を残すが、ダニエル・クレイグ相手では弱い者いじめにあっているように見えなくもない。豊富なアクションシーンにはグリーングラス風の演出が加わり、仕上がりは悪くない。所帯じみたCIA、ボリビアで水道屋さんになりたいという、意外とせこいグリーン氏の陰謀、ジャンカルロ・ジャンニーニの取り扱い、と面白いところがたくさんある。ただ、最後に出てくるあのホテルの、いかに燃料電池満載とはいえ、ツェッペリン飛行船みたいな燃えやすさには首をかしげた(だが、なんにしても同じ監督の映画だとしたらWWZよりはだいぶましだ)。


Tetsuya Sato