2013年7月19日金曜日

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ
2012年 日本 103分
監督:吉田大

バレー部の桐島がいきなり部活をやめて登校もしなくなり、なにも知らされていなかった友人、バレー部員、ガールフレンドは状況に置き去りにされて校内に桐島の影を求め、一方、剣道部の部室に居候している映画部は顧問教師の脚本を拒否して独自に映画の撮影を開始し、校内でロケをしていると映画の撮影をまったくの遊びだと解する桐島の友人、バレー部員などから軽く扱われる。
原作は未読。監督は『クヒオ大佐』の吉田大八。視点を女子グループ、片思いをしている管弦部の少女、映画部などに移し変えながら同じ時間軸の再話を繰り返すという形式で、金曜日から翌週の火曜日までの五日間の出来事を描いている。
演技やダイアログはおおむねにおいて自然で、日本映画にしばしば登場するばかげた「心理描写」は排除することで一定のリアリティを与えることに成功しているが、視点の変更による再話が面白いかというとそうでもなくて、高校生のだらだらとした日常と会話を繰り返して見せられるだけで、同意できる視点を見つけられない観客にとってはただ単に退屈なしろものになっている。構成するという構想だけがあって、それをどう映画的に処理するかという取り組みがすっぽり抜けているように感じられた。いっそスプリットスクリーンにして同時進行する形にでもなっていれば上映時間も節約できたし、もう少し興味深い仕上がりになっていたのではあるまいか。全体に考えが足りていないという印象があって、そういう点では悪い意味での高校生の自主制作映画になんとなく似ているような気もするが、まさかそういう狙いで作ったわけでもないだろう。ちなみに終盤、映画部の前田くんの脳内に飛来するゾンビ襲撃シーンも唐突なだけで生きていない。

Tetsuya Sato