2013年7月27日土曜日

終戦のエンペラー

終戦のエンペラー
Emperor
2013年 アメリカ/日本 105分
監督:ピーター・ウェーバー

太平洋戦争終結後、マッカーサーの幕僚の一人として日本を訪れたボナー・フェラーズ准将はマッカーサーの命令で戦犯のブラックリストの作成にあたり、リストにあがった人物を片端から逮捕していたが、このときリストからはずされていた天皇がアメリカ本国の意向でリストに入ることになり、天皇が逮捕されて裁判を受けることになった場合の日本国民の反応を案じたマッカーサーはボナー・フェラーズ准将に命じて天皇の戦争責任の調査にあたらせる。
現実のボナー・フェラーズはそうとうに多忙な思いをしたに違いないが、この映画に登場するボナー・フェラーズは戦争前に知り合った日本人女性の安否ばかりを気にしていて、気がつくと戦前の甘い回想にふけっているという有様で熱心に仕事をしている気配がない。
『ハンニバル・ライジング』の監督ピーター・ウェーバーは素材に格別の関心がなかったようで(あるいは結局のところこれが実力なのか)、構成は散漫で演出は力に乏しく、肝心の戦犯問題についてもまともに情報が入っていないし、表層にメッセージ性を浮かべることにでも気を取られていたのか、咀嚼をしようとした気配もない。主演のマシュー・フォックスは魅力を欠き、トミー・リー・ジョーンズのマッカーサーはマッカーサーの仮装をしているトミー・リー・ジョーンズにしか見えてこない。日本勢の俳優陣も総じて面白みがなくて、夏八木勲の関屋宮内次官くらいしか見どころがない。低予算でやりくりをして雰囲気を作り出そうとした努力はなんとなく認められるものの、映画としての仕上がりは感心できたものではない。 
Tetsuya Sato