2013年6月18日火曜日

おとなのけんか

おとなのけんか
Carnage
2012年 フランス/ドイツ/ポーランド/スペイン 79分
監督:ロマン・ポランスキー

ブルックリンの公園で11歳の少年が同い年の少年を棒で殴り、殴られたほうが前歯を二本を折ることになり、殴ったほうの少年の両親アラン・カウアンとナンシー・カウアンの夫婦が殴られたほうの少年の両親、マイケル・ロングストリートとペネロペ・ロングストリートの夫婦の家を訪れ、言わばおとなの良識にしたがって友好的に和解の方法を探ろうとしているうちに、まず問題の一件に関する認識のずれに気がつき、続いて微妙な価値観のずれが気に障るようになり、売り言葉に買い言葉のような短い応酬があったせいで帰ろうとしていたカウアン夫妻はロングストリート夫妻の家に戻り、カウアン夫人は気分が悪くなり、アートを愛するロングストリート夫人のコレクションにダメージを与え、カウアン氏は気忙しく携帯電話を取り出しては仕事を続け、そのたびに会話が細切れにされるのでご婦人方が苛立ちを覚え、ロングストリート夫人は自分の良識の押し売りを始め、そのことでロングストリート氏が苛立ちを覚え、仕事で忙しいはずのカウアン氏はロングストリート氏の誘いに乗ってスコッチのグラスを握り、ご婦人方も夫にならって飲み始め、男たちの態度がなんとなく粗暴になり、ロングストリート夫人が夫の態度をなじるとロングストリート氏は野蛮人宣言をして妻の良識をなじり、激高したロングストリート夫人は夫をなじり、ついでにカウアン夫人を偽物となじり、妻を偽物となじられたカウアン氏はロングストリート夫人の慧眼をほめ、カウアン夫人も激高し、ロングストリート夫人が今日は人生最悪の日だと叫ぶとカウアン夫人もまた人生最悪の日だと叫びを放つ。 
ロングストリート夫妻がジョン・C・ライリーとジョディ・フォスター、カウアン夫妻がクリストフ・ヴァルツとケイト・ウィンスレット。ダイアログはさすがに練り込まれているし、ロングストリート家のセットもよくできているし、ポランスキーの演出はリズムがよくて心地よい。うざったい上にみじめな役どころを全力で演じたジョディー・フォスターもなかなかのものだが、終始冷笑的なクリストフ・ヴァルツがとにかくよかった。 


Tetsuya Sato