2013年5月1日水曜日

ザ・スピリット

ザ・スピリット
The Spirit
2008年 アメリカ 103分
監督:フランク・ミラー

セントラルシティの善良な警官デニー・コルトはいったん死亡するものの、なぜか生き返ってしまうので、以降は個人として正義を実現するために警察のスパイとなってネコと一緒に暮らしている。セントラルシティの川にはローレライがひそんでいて、その歌声は船乗りと警官にしか聞こえない。同じ川の底には古い沈没船があって、そこにはヘラクレスの血を収めた壺と金羊毛が隠されている。ということでデニー・コルトのかつての恋人できらきらしたものが大好きなサンド・サレフは金羊毛を狙って川に潜るが、宝箱の形状がまったく一緒であったために誤ってヘラクレスの血を持ち帰り、一方、科学の力を悪のために利用する犯罪者オクトパスは不死を求めてヘラクレスの血を狙うが、クローンで作った子分がアホウであったために誤って金羊毛を持ち帰る。きらきらした金羊毛を見て目がちかちかしたオクトパスはサンド・サレフに宝物の交換を持ちかけることを考え、また一方、サンド・サレフはきらきらしていない壺を嫌ってオクトパスに宝物の交換を持ちかけることを考える。そしてデニー・コルトはオクトパスとサンド・セレフの両方を追いかけ、その合間には女たらしの本性も現わし、余計な御託を並べているうちにオクトパスが張った罠にあっさりとかかり、女たらしに精進したことが幸いとなって窮地から逃れ、女たらしに精進したせいで死の淵を歩み、デニー・コルトがふらふらしているあいだにサンド・セレフとオクトパスは宝物を交換する手筈を整えるので警察は大部隊で待ち構える。
ウィル・アイズナーのコミックのフランク・ミラーによるきわめてフランク・ミラー的な映画化。モノトーンを基調にした色彩設計とダイナミックな空間設計が美しい。ニューヨークをもとにした架空の都市セントラルシティが古色を帯びてそびえ立ち、そこを五十年代の車が走り、かと思うとフォードのトライモーターが空を飛び、携帯もパソコンも普通にあって、警察はモダンな攻撃用ヘリコプターを繰り出してくるのに負傷者の搬送にはシコルスキーS-55がさりげなく現れる。主人公は並みの人間で雑念が目立ち、恥をかいても立ち直りが早く、対する悪役は人材の払底に悩んでいるが、それでも自分の立場を楽しんでいる。ということで悪者オクトパスを演じるサミュエル・L・ジャクソンがうれしそうに日本刀二本差しで現れたり、ナチの制服を着込んでモノクルをかけて現れたりする。がっちりと構築されたところにおいしいものが満載で一瞬たりとも目が離せなかった。これは傑作であろう。 





Tetsuya Sato