2013年2月6日水曜日

ニノチカ

ニノチカ
Ninotchka
1939年 アメリカ 110分
監督:エルンスト・ルビッチ

ロシアの通商部から三人の男がパリに派遣される。この三人は帝政ロシア時代にスワナ公妃が所有していた十四点の宝飾品を持参しており、ソビエト・ロシアの人民を翌年の飢餓から救うためにこれを売却しようとたくらんでいたが、当のスワナ公妃がそのたくらみを事前に知り、財産を取り戻すために男友達のレオン・ダルゴー伯爵を派遣する。ダルゴー伯爵は三人のロシア人の前に現われて公妃のために事態を複雑にしていくが、ソ連当局はその対策としてニーナ・イヴァノバ・ヤクショーバ同志に全権を与えてパリに送る。同志ヤクショーバは鉄の女であったが、ダルゴー伯爵はそのヤクショーバ同志にひとめぼれするので、これはこれで事態は複雑になっていく。
グレタ・ガルボが最高に美しい。笑わないグレタ・ガルボもきれいだけど、例の食堂の場面で笑い転げているグレタ・ガルボはもっと美しいと思うのである。映画自体はいたって幸せなコメディで、冒頭、三人のロシア人がホテルのロビーを出たり入ったりする場面からすでに笑える。この三人は映画の最後までつきあうことになるわけだけど、その誇りに満ちた気弱さとうかつさはいつもどこか笑えるのである。ダルゴー伯爵にたぶらかされてホテルでどんちゃん騒ぎをする場面など実にうまくできているし、同志ヤクショーバ、つまりニノチカを駅まで迎えに出かけていって、そこで無理もない勘違いする場面などは最高であった。いや、やっぱり区別はつかないのである。後半に登場するモスクワのメーデーの場面のいかがわしさもすばらしいし、それを見下ろすニノチカの部屋でのむさくるしい生活ぶりも立派なコメディになっている。で、気がつくとわたしはビリー・ワイルダー的な部分にもっぱら反応していて、しっとりとしたところにはあまり反応していないということになるわけだけど、それにしてもこれはいろいろと嫌みな薬味が効いていて、やはりヨーロッパの人間が作った映画だと思うのである。 





Tetsuya Sato