2013年2月17日日曜日

昼下がりの情事

昼下がりの情事
Love in The Afternoon
1957年 アメリカ 134分
監督:ビリー・ワイルダー

アリアーヌは私立探偵クロード・シャヴァスを父に持ち、コンセルヴァトワールでチェロを習う学生で、1822年からこちら、一度も問題を起こしたことのない家の出の若者とつきあっていたが、名うてのプレイボーイでアメリカ人の大富豪で、どうかすると父親ほども年が離れているフランク・フラナガンの姿を父親が盗撮してきた不倫現場の証拠写真に発見して好ましく思い、そのフラナガンを不倫相手の夫が射殺しようとたくらんでいると知って、急ぎホテルに駆けつけて不倫の現場に潜入し、名前も身分も明かさぬままに危険を伝え、そしてそこでフラナガンの現物と出会った結果、アリアーヌはいよいよ恋に落ちて、再びフラナガンの前に現われるとあたかも恋の玄人であるかのようにふるまい始める。
オードリー・ヘップバーンがとにかくチャーミングで、そのヘップバーンが父親の事件簿(不倫ばっかり)をネタにして思いつくままに架空の恋の経験を語り、恋人のリストを聞いて苛々し始めるゲイリー・クーパーがまた実にいい感じなのである。そしてモーリス・シュヴァリエはおとなを演じて、味わい深い。リッツの廊下を右往左往する給仕の群れとジプシー楽団、嫉妬にもだえるゲイリー・クーパーとジプシー楽団とのあいだを酒を載せて行ったり来たりするワゴン(ここの音楽の仕込み方が絶妙なのである)、オペラ座で連れの女を見失った瞬間にまわりの女を物欲しそうに眺め始めるゲイリー・クーパーといった楽しい描写が山ほどもあり、クライマックスの駅の場面では練り込まれたダイアログの勝利と力強い演出の勝利を目の当たりにさせられて、ちょっとないような感動を味わえる。


Tetsuya Sato