2013年2月12日火曜日

情婦

情婦
Witness for The Prosecution
1957年 アメリカ 117分
監督:ビリー・ワイルダー

自称発明家のレナード・スティーブン・ヴォールは中産階級の未亡人エミリー・ジェーン・フレンチ殺害の容疑で逮捕される。状況証拠はすべてヴォールに不利であったが、法廷弁護士ウィンフレッド・ロバーツ卿は高齢と病身を押し、さらに看護婦と戦いながらヴォールの弁護を引き受ける。
見るからに善良そうな男ヴォールがタイロン・パワー、そのドイツ人の妻がマレーネ・ディートリッヒ、弁護士ロバーツがチャールズ・ロートン、ロートンにしつこくつきまとう猛烈な看護婦がエルザ・ランチェスターである。チャールズ・ロートンの老獪な弁護士ぶりがまず目を牽き、その弁護士とエルザ・ランチェスター扮するけたたましい看護婦とのやりあいがとても楽しい。クリスティの戯曲は読んだことがないのでオリジナルとの差分を得ることもできないが、ダイアログにしても場面の作り方にしても、かなりワイルダー的な要素が組み込まれているものと考えている。モノクル、葉巻、魔法瓶といった小道具もおそらく映画に固有のものであろう。ダイアログはよどみがなく、展開には瞬時の切れ目もなく、常になにかが起こっているか、あるいは起こりかけており、その緊張感はただごとではない。クライマックスの法廷シーンもしたがって否応もなく盛り上がる。




Tetsuya Sato