2013年1月30日水曜日

真昼の決闘

真昼の決闘
High Noon
1952年 アメリカ 85分
監督:フレッド・ジンネマン

西部の小さな町で保安官ウィル・ケーンがクエーカー教徒の若い妻エイミーをめとり、保安官の職から退こうとしていた頃、五年前に逮捕して北部へ送った無法者フランク・ミラーが釈放されて町へ戻りつつあるという知らせがもたらされる。フランク・ミラーを迎える三人はすでに駅にあり、列車は定刻どおり正午に着くということが判明し、そこで時計を見上げると残された時間は1時間20分ほど。フランク・ミラーの真意が保安官への復讐にあることは明らかなので、結婚式に居合わせた市長はウィル・ケーンに逃亡を勧め、ウィル・ケーンもまた促されるまま、花嫁を馬車に乗せていったんは町から離れるものの、おそらくは逃げることのわずらわしさへの思いから考えを変えて町へ戻る。このとき残された時間は1時間10分ほど。妻エイミーからすれば保安官職を辞したウィル・ケーンに責任はまったくないはずであったが、ウィル・ケーンはエイミーの説得をあくまでも拒み、保安官事務所へ入って判事の逃亡をむなしく見送り、それから保安官助手を招集する。しかし、やってきた助手ハーヴェイは協力への代償として人事上の取引を持ちかけ、ウィル・ケーンが取引を拒むと助手を辞任する。困ったウィル・ケーンは加勢を町の住民に求めるが、親友と考えていた男からは居留守を使われ、元保安官からも体調を理由に断られ、酒場でも拒絶にあい、教会の会衆からも見捨てられる。どうやら五年前に何かがあってフランク・ミラーが逮捕された結果、酒場にたむろしている連中はウィル・ケーンに憎しみを抱き、教会の会衆は治安の回復に感謝してはいるものの、いま歓迎すべきは投資と発展であって、拳銃による暴力ではないと結論を下している。孤立無援となったウィル・ケーンは事務所に戻り、やがて時計は正午を指し、汽笛が鳴り、列車は駅に到着し、フランク・ミラーは出迎えの仲間三人と合流する。
時間の経過とともに荒廃していくゲイリー・クーパーの表情がすごい。すべてのいきさつを説明するのではなく、最終的に与えられた状況と、その状況がはらむ感情と利害の対立をダイアログにじわじわとにじませていく脚本もすごい。編集のすごさ、というのもあると思うが、ジンネマンの演出はリズミカルでテンションが高い。カメラは助っ人を求めて町をさまようゲイリー・クーパーの姿をパースを強調したフレームでとらえて印象的で、随所にアップを多用することで圧迫感を加えていく。きわめてよくデザインされた作品である。ジャック・イーラムが留置場の酔っ払いで、リー・ヴァン・クリーフがフランク・ミラーの仲間の役で登場する。
真昼の決闘 [DVD]

Tetsuya Sato