2013年1月3日木曜日

赤ちゃん教育

赤ちゃん教育
Bringing Up Baby
1938年 アメリカ 102分
監督:ハワード・ホークス

デヴィッド・ハックスリー博士は自然博物館の主催者で四年もかけてブロントザウルスの化石標本を組み上げていたが、その博物館に百万ドルの寄付の申し出があり、寄付者の代理人と会って確約を得ようとしていると、そこへいささかエキセントリックなご婦人スーザン・ヴァンスが登場してハックスリー博士を奇怪な騒動に巻き込んでいく。ハックスリー博士も状況を打開しようと非力ながらも試みるが、言葉数ではスーザン・ヴァンスが博士をはるかに上回り、どうにか口をはさむことに成功しても相手は博士の話を聞かずに関係のないことを考えていて、博士が何かを言うよりも先に行動してしまうので事態はいっこうに好転しない。
ヒロイン、スーザン・ヴァンスはとにかく騒々しくて口数が多くて、口数が多い割には肝心なことを伝えられないし、何かに気を取られると手元も先のことも見えなくなるし、さらに恐ろしいことには手元にあるのが自分の物か他人の物かもどうやらあまり気にしていない。そういう役をキャサリン・ヘップバーンは魅力全開という感じで実に快活に演じている。相当に突拍子もないキャラクターなので、次に何を始めるかと思って見ていると、これがもうすごいサスペンスなのである。ケイリー・グラントはテンポが一つ遅れた朴念仁のハックスリー博士を好演していて、これもなかなかによい感じであった。騒動に関わっていく町の警察署長、神経科医、弁護士、叔母さん、叔母さんの家の家政婦と庭師、さらにハックスリー博士の婚約者などもみな個性が豊かで、それぞれに笑えるし、スーザンが連れて現われる本物の豹もかわいらしい。とはいえ、なんといってもキャサリン・ヘップバーンがすばらしく印象的で、見終わったあともそのおばかな演技などを反芻していると思わず顔がにやついてくる。見どころが多くて、だから見ていて幸せなコメディである。 
赤ちゃん教育 [DVD] FRT-117

Tetsuya Sato