2013年1月20日日曜日

テッド

テッド
Ted
2012年 アメリカ 106分
監督:セス・マクファーレン

1985年、ボストン郊外の住宅地にクリスマスシーズンが訪れ、近所の悪ガキがユダヤ人の少年を袋にしていたころ、袋にされているユダヤ人の少年からも拒絶されるほどひとりぼっちな少年ジョン・ベネットはクリスマスの贈り物にかなりおおぶりなクマのぬいぐるみを受け取り、このクマにテディと名づけて永遠に続く友情を誓い、ありがちなことではあるが、テディとお話ができたらな、と祈ったところ、いきなり奇跡がおこってテッドは歩いてしゃべるようになり、そういうぬいぐるみのクマはなかなかにいない、ということでまたたく間にテッドはセレブなクマになり、それから27年後、35歳になったジョン・ベネットはかつてのひとりぼっちの少年ではなく、レンタカーの会社で働き、交際四年目を迎えた恋人もいて、一方、27歳になったテッドはいつの間にか声変わりして、女と見ればすかさず胸に触るようなエログマと化し、マリファナはやる、お酒は飲む、コールガールを呼びつける、というような言わば好き放題な日常を送っていて、ジョン・ベネットの恋人ロリ・コリンズはジョン・ベネットとの関係が四年かかっても進展しないのはテッドに原因があると考えてジョン・ベネットにクマ離れを要求し、ロリ・コリンズを失うことを恐れたジョン・ベネットはテッドに別居を求め、そこでテッドは独立してスーパーのレジ係になって何の困難もなく恋人も見つけ、旺盛に生活力を発揮しながら毎日のようにジョン・ベネットを呼びつけてマリファナを吸う、映画を見る、パーティに呼ぶ、などの行為を繰り返すので、ロリ・コリンズはいっこうにクマ離れできないジョン・ベネットと絶交し、失意のどん底に落ちたジョン・ベネットを救うためにテッドは前足を差し伸べるが、そこへテッドを狙う魔の手が現われる。
ジョン・ベネットがマーク・ウォールバーグ、ロリ・コリンズがミラ・キュニス、テッドの声がセス・マクファーレン。ジョン・ベネットとテッドは1980年版の『フラッシュ・ゴードン』という正真正銘の駄作をなぜか信奉していて、二人の前に本物のサム・ジョーンズが降臨する。
プロットはおおむね定式にしたがい、ぬいぐるみのクマが下ネタに連結されてクマ離れできない人間が目を覆うような光景が次から次へと出現するが(そしてもちろんうちのクマのコードからは大きくはずれていることになるが)、テッドが自意識の強いクマとして描かれているのでさほどのいやみにはなっていない。周辺人物までキャラクターは確実に色分けされ、ダイアログはおおむねにおいてテンポが速く、それなりの密度を備えている。ということでコメディとして鑑賞に耐える水準にはあるものの、映画全体としてはややリズムを欠き、ところどころには泥臭さも見え、そういうところも含めてセス・マクファーレンの持ち味ということになるのかもしれないが、洗練された仕上がりであるは言い難い。ところで劇中の回想シーンに登場するディスコの場面は『サタデーナイト・フィーバー』のパロディではなくて、たぶん『フライング・ハイ』の引用であろうと思う。 


Tetsuya Sato